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(1)記述文の書き方(講義と演習)

体力には自信を持っていたんですが,年明けから徹夜が続くと体力が持たないことがよく分かりました。(堀田つっこみ「今笑うところなんですけどー」)資料は二種類。PPTのスライドが6点並んでいる資料。もうひとつワークシートと書かれている。こちらがノートがわりになります。本日の内容3つあります。記述文の書き方を40分,わかりにくい文章例を40分,プレゼンテーションを60分やります。

まずお話を始まる前にですね,常に念頭に置いていただきたいことがあります。それはですね,書き手,相手。

わかりやすい文章というと,「書き手」のことばかり考えるんですが,実は書き手が大事じゃなくて,相手が大切なんですね。相手に分かるかどうか,相手が見てどう思うか,もしくはプレゼンを聞いてあいてがどう思うかあが問題なんですね。常に相手を意識することを考えてくださいね。相手がどう思うか?を常に考えながらやっていきます。では,まず最初に記述文についてやっていきます。記述文とは。これは盛岡健二先生,文章の大家と呼ばれる方ですが,文章構成法という本にあります。

なんのこっちゃと思うかもしれませんが,練習してみるとこの意味がわかってきます。記述文には科学的記述文,と文学的記述文とがあります。夏休みどうしたこうしたは文学的記述文ですね。今回説明するのは科学的記述文。こちらのほうを練習したいと思います。

じゃ,練習しましょう。設定は電車にバッグを置き忘れました。駅員さんがいて,それを駅員さんに正確伝えてさがしてもらいます。書類かばんを忘れました。価格は1万円くらい。色は黒です。大きさ。横幅が40cm高さが30cmまちが10cmあります。それから両面にポケットがあります。さあ,このバッグをぜひさがしてくださいということで,このバッグについて記述していきたいんですが,電車にものを忘れたとき,何時何分の何両目っていうこともあるんですが,今回はそれを抜いてバッグそのものを記述してください。バッグの中に何が入っているかということも今回は割愛してください。では,どうぞ。

(5分間演習の時間)

色は黒だって言っただけじゃ素材までは分かりませんね。皮の書類かばんか,ナイロンか,布か色々ありますよね。これ(課題の演習にある)素材はナイロンです。

はい。平田さん。読んでください。

平田:
黒い書類かばんを忘れました。形は長方形で…はばは40cm,高さは30cm,はばは10cm,両面にポケットがついていて,もちてが二つ付いています。素材はナイロンです。お願いします。

冨永:
だいたいみなさんこんな感じじゃないかと思います。学生さんは書いてもらうと…私は文教大で講師をしているんですが…順番がめちゃめちゃです。色も抜けています。書かなくてよいこともあります。これを必要十分な情報をわかりやすい順番に伝える。子供に「わかりやすくかきましょうと」いってもどうすればいいかわからないわけですね。それをテクニック的に順番だてて伝えることを考えます。

実はわかりやすい文章を書くための手順というのがあります。(スライド7)

対象をよく観察して情報を整理しましょうということですが,ワークシートにありますが,こういう表を使います。左側の黄色い部分が,対象を説明するのに必要な情報です。まず,種類。バッグといっても色々あります。それから大きさ。持ち手のように部分,それから色,素材。これは対象によって違います。フロッピーディスクなら機能というのもあるし,特徴というのもあります。書く内容によってこの部分は変わってきます。

このように情報を整理する表があれば,何がないかが分かるんですね。最初にちゃんとこれが出してあれば,素材について書いていないことが分かります。こうやって情報を整理します。情報を整理して2番目なんですが,この中に読み手と書き手にあわせて,書く事柄を選んでいきます。これも書いていただいたんですが,文章には必ず読み手と目的が決まっているんですよ。たとえば通知文書,健康診断のお知らせ,みなさん先生方が保護者の方に出すお知らせ。そういう通知文書。目的は情報伝達。健康診断は何月,何日,前日は飲み過ぎないようにね,というように。パンフレットなどは,購買意欲をかきたてるというのが重要ですね。車でもいろんなキャッチセールスがあると思います。

今一番おもしろいのは深夜番組の通販の。「たった10分間で1時間のエクササイズに!」「これであなたもスリムな体型に!」ああいう購買意欲をかきたえる文章。論文・レポート。相手に伝えるということ以外に,自分の評価を高めるというのがありますね。このように文章によって,必ず読み手と目的が決まっているということですね。

この場合相手は駅員さんで,バッグを見つけてもらうというのが目的ですね。種類から,色までは必要ですが,価格は必要なさそうですね。用途も必要なさそうですね。でも,価格が40万円のエルメスのケリーバッグだったら言わなきゃいけないですね。このように事柄を選びます。

3番目。言葉を選んだら大切なのは情報を説明する順番です。相手がイメージを形づくれるようにならべていくということです。読み手の指向を導く。説明を聞くでしょ?その説明を聞きながら頭の中でイメージを描ける。40cmぐらい。高さは30cmで,まちもあるんだ,と。で,両面にポケットと,もちてがある。これ聞きながら頭の中でイメージできます。だって,最初から持ち手が2つって言われたら困るじゃないですか。だからちゃんとイメージが作れるようにしなきゃいけない。で,全体から部分へ,大きなところから小さなところへ。それから重要度。あるソフトウェアの機能を説明する場合,セールスポイントになるところから説明していきますよね。

それから視点の移動。たとえばコンピュータの画面について説明する場合。Wordなら上から説明する。タイトル,ツール,上下したりしない。順番に移動する。右から左,左から右。風景なんかそうですね。手前から奥,奥から手前に順番に。

こないだですね,あるグラフについて説明しなさいと言いました。

説明しろというと学生には重要かどうかが分からない。どうも重要度は経験にもとづくみたいなんですね。英文科の学生さんなので,こういう会社の売り上げ推移グラフについて何が大切で,何が大切じゃないか分からないんですね。でも,そういう人たちに「じゃあ,しょうがない。全体から部分に説明しなさいと」言うんですね。最初は「各社とも売り上げが毎年増加している。一番大きいのがA社,次にB社,C社」。全体から部分。おおまかな情報から細かいところへ。

バッグの場合はどういう順番かですね。これもやっぱり全体からです。まず左側(表)要素からですね。形があって,大きさがあって,素材から色は好みがあるんですが,素材からですね。もし色がものすごく変わっているようであれば,そのときは色からです。

さあ,これで書いてみます。資料3ページの「簡潔な文章」にあるように,主語と述語だけで並べていきます。これだったら誰でも出来ますね。でも,これだけでも十分な情報が伝わってきます。ただ,大人だとこれだとあんまりなので,その次の「リズム感や表現方法を工夫する」ですね。ぶつ,ぶつ,と切れた文章をつなげます。

(…)

と,こういうふうになります。これをですね,大学の授業の一時間目にします。私の授業にくるのは文章が苦手な人の集まりなんですね。書くのが嫌。表にすればできるんですね。そうすると,やってみて,一時間目に希望をもたせる。そしてあとは「この先生についていかせようかな?」とする。(笑)

実はいまやったようなことを。三森ゆりかさんという方。この方は書き方の私塾を開いている。そこで小学生の子を集めて,月1回練習させている。これは、三森さんの著書「「描写文」の訓練で力をつける」(明治図書)のP111に掲載されている作品です(作品をスライドに表示)。これ何年生だと思います?原文はひらがなですが、大人が読みやすいように一部漢字にしました。

五十川:
2年生!

冨永:
あたりです。しかもこの子はこの塾に月に1回です。これだけの量書けるだけでもすごいと思います。これを学生に見せるとすっごい反省するんですよ。

結局はですね,この練習するときは最初に表を先生が出す。実はこれが出せるかがミソ。みなさん最初にやったとき素材がない人がいましたね。練習していくうちにコレが自分で出せるようになります。それが経験だと思います。モノが分かっても,観察すれば何が必要か分かるようになります。で,テクニカルライターはそれができるんですよ。経験からこれができるんですよ。同じフロッピーディスクでも,相手がそれを見たことがない人でも,後はコンピュータの上級者に対して説明するときによって,説明の仕方が違います。見たことがない人には外観から説明しなきゃいけないんですが,コンピュータのプロでもない人に仕組みを教える必要はないです。

あと,最近フロッピーをしらない子がいる。時代と共に書く内容が変わる。いつもかわらないと思っていてはダメです。

記述文の訓練でどんな力がつくか?

(…)

さあ,ちょっと今説明してきたんですけれど,文章を書くのに必要な能力を説明してきました。一番大事なのは論理性なんですね。さきほどの記述の書き方でいうと,情報の整理の仕方,相手によって書くべき内容を変える,説明する順序を決める。これは文章の骨格なんですね。骨格,論理がしっかりしていないと後でどんなに色をつけてもどうしようもない。で,その骨格ができれば,正しい文法,適切な表現,をつけていけばいい。そこまでいって次にリズム感。さっきの「○○は△△である」を,リズム感でなめらかにします。最後が読者をひきつける力。おもしろいって思わせる力。

なめらかにするリズム感。最後が表現力・演出力。文章の書き方でお話をしてくれって言われると,受講者の方はうまい文章を教えてくれというんですね。学生もうまい文章の書き方を教えてくれと言われる。でも,論理性ができていなければダメなんですね。パソコン誌の編集長にそのお話を聞いたことがあるんです。論理性のある文章と,リズム感があって論理展開がなってない文章とどっちがいいかといえば,それはもちろん論理展開がちゃんとなっている文章。論理展開がなぜまずいかを教えるのはむずかしい。論理展開をいかに作り上げるかが問題。

文教の学生さんのレポートは喫煙か非喫煙に賛成か?論理展開としては,喫煙者にとってのデメリット,非喫煙者のデメリット,ゆえによくないという展開。学生によっては喫煙者のデメリットを書いていたのに,喫煙者のメリットを書いていたのに,また喫煙者のデメリットを書く。めちゃめちゃな構造です。

 


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