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(3)プレゼンテーション(講義と演習)

プレゼンというと話をすればいいと思っている人がいる。実は相手がいる。その,相手に判断や意志決定してもらうところまでがプレゼンです。これも,わかりやすい文章をいい文章って言っちゃうのと同じで,プレゼンというとうまい話をすればいいと思っている人がいます。

企画=これからやろうとすること
研究=こんな成果が出ましたということ

企画のプレゼンはこれからやろうとすることについて説明すること。研究はすでにやったことについて,あんなことや,こんなことがあったと成果を報告することです。企画のプレゼンは,たとえばスズキ教育ソフトさんが,どこかの自治体にいらっしゃって「こんなソフトありますよ」って紹介するのですね。それから,社内向けに説明するプロジェクト。役員の許可をとったりするときのプレゼンなどですがありますね。

それから,活動研究成果の発表というとQC活動というのがあります。Quality Control。品質管理。たとえばソフト管理ですが,バグ…仕様書通りにいかないことがあります。それを減らすための活動。品質を向上させるための活動。それがQC活動です。同じようなものでCS活動。有名なのはニッサンだったかホンダだったかが,ショールームレディ。来ていただくお客様にいかに気持ちよく過ごしていただくか?ショールームをきれいにする。お茶をお出しする。パンフレットをちゃんとわたして説明する。その成果を発表するというのがあります。

実は,私自身はNECの会社のQC活動でプレゼンを練習しました。NECというのはいくつもの会社に分かれていて,その下に事業部があるんですね。どんなに小さな事業部でも100人くらいあります。官公事業部だとか,金融事業部だとか。防衛庁のシステムを作っていたり,昔のNTTのシステムを作っていたりなどです。NECはこのQC活動をものすごく一生懸命やっていたんですよ。SWQC。半年のスパンで目標をたてて活動していたんですよ。結果を論文にまとめて,その論文を事業部の中の課ごとに提出して,論文審査を通します。事業部の審査を通ると,事業部内でのプレゼンがあるんです。発表の時間が15〜20分。質疑応答が10分から5分。そこでコンクールみたいになって,事業部の代表になったのが,NEC全体の論文審査に向かうんです。そこでまた選別されて,取った人たちだけがオールNECの発表会に出られます。

会社というのは売り上げをあげているところです。役員というのは売り上げでしか事業を判断できません。すると,防衛庁の仕事をしている事業部は何百億と売り上げをあげるんですね。それに比べて私の部署は研修センターといって,販売店の要員にコンピュータの使い方を教えていたんですね。研修をする場所なので,どう考えても何億も売り上げは出ないじゃないですか?そうすると,上の人は「研修センターはいつも同じことをしていて,何の努力をしていない」となるわけですね。私の上司はサラリーマンの鏡のような人だけで,「それじゃだめだ」という人でした。研修センターが自分をアピールできるのは,こういうプレゼンテーションだけなんですね。だから,死にものぐるいで通れと言われました。そうでないと,何のために仕事をしているんだ?ってことですね。

たぶん,学校の先生んもそうだと思うんです。私も情報教育の取材を2年間くらいやっていました。現場の先生はものすごいがんばっているんですけれど,それが伝わるのは学校の先生の中だけです。それを社会の人にむけて発表することはないんですよね。これからは,もっと外に向けて発表して,評価してもらわなければならないと思います。そのためにプレゼンは必要不可欠だと思います。

あっ,ちなみに私オールNECの大会で2回最優秀賞を取ったんですよ。(会場拍手)

これからはプレゼンテーションのツールを使えるのは当たり前かと。大人はPowerPointですが,子供向けには「はっぴょう名人」なんかを使っているところがあると思います。あの,一度こういう子供のプレゼンテーションソフトでやっているところを見せてもらったんですが,子供はクオリティの高いプレゼンをしますね。それは一回作って「うーん。これでいいかな?」と子供なりに思うんですね。じゃあ,わかりやすくするために「図を入れようか」となる。出来ない子でも自分の考えで変えていく力はある。すごく時間はかかるんですけど,その間その子はずっと考えているわけです。

プレゼンは大きく3つに分かれます。序論,本論,まとめ,です。プレゼンは最初の5分間が勝負です。5分を過ぎると聞き手の興味がどんどん下がっていくんですね。序論では,これから何を話すか,興味関心を持ってもらう部分です。それから本論。何か問題を解決するものの場合,問題点→原因→解決策の提示,となりますね。まとめで「これをやらせてください!」となるわけです。レポートの報告のような場合,何をして,解決したのかを要約します。まとめで,プレゼンテーションの内容を確認して,強調します。

実際にプレゼンの資料を作成するときのポイントをあげてみました。まず,相手を意識することですね。先ほど言ったように,プレゼンは相手に理解してもらって,判断・意志決定をしてもらうものなんです。相手のポジション,たとえば会社でシステムを入れる場合,プレゼンの相手が経営者か,それとも現場の担当者かによってしゃべることが違うんですよ。経営者の場合,今までこれだけかかっていた部分が改善できて,コストがかからなくなる,という経営者にわかるように話すんですね。だけど,現場の人の場合は,経営のことを話しても仕方ないので,「この部分の使い勝手がよくなります」というように話しますね。専門知識ですが,相手が初心者の場合に,やれネットワークシステムがどうだ,通信速度が8Mだとかいっても「それはどのくらい速いのかしら?」と思われちゃうわけですね。

次に,1画面の情報量に気を付ける。1画面に1要素です。たとえば,問題点が3つあれば,それぞれのスライドに分けます。

文章もプレゼン用にします。長い文章をそのまま書いてしまうと,あとはそれをしゃべるだけになるんですね。そうすると,たとえば資料を配布すると,「なんだ,読んでるだけだ」と思って下を向くんですね。プレゼンは下を向かせたら負けなんです。こっちを向かせなければいけない。学校の先生なら分かりますよね。文字サイズはプレゼンによるんですが,14pt以上。大きいところならもっと大きくないといけません。

作成のポイントですが,相手の興味を引き,記憶に残る説明手法を活用します。概念図・表・グラフを活用します。1枚あたり15秒から20秒ですね。ぱっぱ,ぱっぱと変わっていく感じですね。それから,オーバーレイや,マスキングのように,徐々に見せるんですね。PowerPointの場合アニメーションで出すことができます。

リハーサルを行う。資料を作って終わりではダメなんですよ。資料を作って一度も声に出して練習しないと大失敗します。そんなにスラスラ言葉出ませんもの。私なんかはここ一番のプレゼンの場合は文章書きます。何度も練習します。そうするとつっかえる場所が分かるんですね。そこを書き換える。そうやって何度もやるとプレゼンが頭の中に入っちゃいます。それから,声の大きさや,抑揚,視線。視線というのは学校の先生ならおわかりと思います。声の大きさは通るようには当たり前なんですが,抑揚は「間」…ですね。ちょっとしゃべる間をあけると人って集中するんです。使いすぎるとうっとうしいだけです。それから,チェックシートを作ってほかの人に評価してもらいます。忘れがちなのは,聞き手の質問を想定し,準備することです。プレゼンでは質疑応答の時間があって,これに答えて初めてプレゼンです。プレゼンの内容って完璧じゃないんですよ。弱いところが必ずあるんです。それは書いている本人が一番分かっているはずなんですが,そこはかならずつかれます。そこがしどろもどろになるとプレゼンは失敗です。

一応,今ざーと説明したんですが,これから悪い例をお見せします。どうしようもないってほど悪くないんですが,改良の余地のあるプレゼンです。演習はこれを見てなおしてもらいます。

# 演習後の改善

目次をつける…聞く人の心の準備ができる「いつ終わるんだろう…」という不安が解消
文章で説明していた章分けの部分をイメージで伝える
具体例を提示する

人の記憶について知られていること

  • 文字
  • グラフィック
  • 文字+グラフィック → 一番強く残る

グラフは多弁だから,グラフが何を言いたいかをちゃんと示す。

量的データと質的データをあわせてこそ。
たとえば富永さんなら受講者アンケート(量的データ)と,質的データ(考察)。

最初は文章で書くんだけど,それをうまく概念図に書けないかな?と考えるようにする。それをうまく図解することによってイメージを(聞いている人の)アタマに植え付ける。

相手がどうかってのが一番大事。相手のアタマの中にイメージができあがっているかどうか。相手の意識を変えることができるかどうか。最初は書くお話をしました。次にプレゼンのお話をしました。書くことも,話すことも同じなんですね。

今,書くことと話すことを考えましたが,実は聞くことと読むことも同じなんですね。たとえば質問ゲームってのをやってみます。二人組でやらせるんですけれど,「あなたは野球とサッカーどっちが好きですか?それはなぜですか?どうして好きですか?」と。でも,これをやらせると実は聞き手が難しいんです。自分が予想していたものとまったく違うことを言われるわけですよ。そのときにとっさに質問を仕返す。それから,読み取ることができなければ書くことはできませんね。

書くことって上っ面じゃないんですね。上っ面だけじゃちゃんとしたものはかけない。必要なものを考えて,論理だてるときはものすごく考えます。そのとき相手のことを考える。相手のことを知らなければものは書けません。これらすべてのことをまとめて私はコミュニケーションだと思います。

こういう話をすると「心はどこにある?」と言われることがあります。テクニックに走っているんじゃないかと。テクニックに走るわけでは決してないです。相手のことを考えなければ書けない。わかりやすく表現するための手段は,相手のことを考えることです。ということで,私のまとめとさせていただきます。

(おわり)

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