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情報学特別講義III

廣田多加治・ソリューション事業本部プロジェクト課長

2002年12月19日(木)情報学特別講義III
「廣田先生:SEに必要なスキル・視野(特にその道に進みたい学生へ)」
廣田多加治・ソリューション事業本部プロジェクト課長

堀田
現場のSEの方の話。

廣田
おはようございます。こんなにたくさんの方がいらしゃるとは思いませんでした。自己紹介。富士通株式会社文教システム部の廣田と言います。今日はもう1名、谷口。入って11年目でバリバリのSE。

今日の全体的な流れですが、午前中に谷口の方からSEの仕事こういうのやってるよっという話、廣田からは一般的なSEってのは、という話。午後はキャリアパス、社内の教育。最後の方で、皆さん大学の中でどういったことを身に付けばいいのか。即戦力として必要な力。3日目ということでお疲れと思いますが、がんばっていきましょう。途中、適に休憩を取らせていただきます。

正式には富士通株式会社ソリューション事業部西日本システム統括部文教システム部。カテゴリーというのは、いろいろSEある中で、フィールドSE。大学とか高等高専、研究所、塾や予備校といった教育産業を主に。コンサルティング、システム構築、開発。

ソリューション事業って一体何?というのがあると思います。ソリューションっていうのは、問題解決というのが日本語になりますが、お客様がどういう問題をかかえていて、それをシステム的にどう解決していくか。富士通の中では、東京、東日本、西日本ということで分かれています。

経歴。どんな仕事にたずさわったか。1年目は入ってすぐにアセンブラ言語。どちらかというとOSに近い言語を使ってプログラミング。2年目はOSをサポートする業務をして、3年目はネットワーク。4年目はそろそろ1990年くらいですが、LAN、Ethernetがだんだんと出てくるころ。そのころは富士通でもLANがなかった。研究所や大学にネットワークを導入した。そうこうしているうちにネットワークもできるようになってきたので、スーパーコンピュータシステムの構築に携わるようになりました。飛んで7年目、9年目で新しいことに挑戦。それまでは基本的に大学のシステムのサポートをしていた。その上で動くアプリケーション。事務の方々が帳票を出す、皆さんが在学証明書をほしいといったときにシステム的に出す、というアプリ開発をした。設計開発やプロジェクト。小規模なプロジェクトに始まり、大規模なプロジェクトに。いろんなことをやっていって、初めてグループのマネジメントや、システムのコンサルティングをやるようになりました。

富士通の組織。社長の下に経営組織、その下に「ビジネスユニット」というのがある。我々が属しているのはソフト・サービスビジネスグループ。その中にソリューション事業部がある。

#グループの紹介、多すぎて説明もないので何するかよく分からない

その他、プラットフォームビジネスグループ。ここのソフトウェア事業部ってのがSEっぽいんですが、ここは富士通が共通で出すOSのドライバの開発なんかをしてる。開発とSEの違いは、システムインテグレーション事業部でもソフトを作っていますが、業種にあわせたソフトを開発しています。公共システム部でいうと、自治体をサポートしているので、住民票を出したりするシステムを作って、浜松なら浜松にカスタマイズして提供していく。

SEの種類。富士通は情報サービス企業に入ります。ユーザー企業さん。ユーザー企業さんの中にもSEさんはいらっしゃいます。企業内SEという形で、我々とは違った仕事をされていると思う。企業内システムに関する設計・運営。我々の仕事はお手伝いするだけで、コンサルティングや提案をしていくのが仕事になる。窓口として運営はするけれど、設計から導入・運営をしていくときもある。そういったときはコンサルティングというよりシステム構築や運用の支援をさせていただく。あるいはマシンそのものは大学や企業には置かないで、サービス企業に置いてサービス提供することもある。そういうときは富士通内にデータセンターを置く。

言い方悪いですが、SEは商品という形で、人を売る、人を買う、ということになります。営業さんにはそのSEを売っていただくと。

#SEの種類の紹介

情報サービス企業というのは富士通のようなメーカー系もありますし、トヨタさんのように自分のところで作ったシステムを発売している企業系、完全に独立で自分のところのソフトを売りながらSEとして活動している会社もあります。ここにいらっしゃる方は将来的にはSEになりたい、開発にたずさわりたい、という方が多いと思う。どこでも仕事はいろんな形でありますので、自分が一番何をしたいかを今のうちに考えておいた方がいいです。

SEのお仕事。入社して1年目、3年目、10年目。1年目はトレーニー(トレーニングを受ける人)。このときは実際に指示されて仕事をする。3年目になるとアソシエイトSE。初心者、入門したばかりでこれからがんばるSE。昔はこのあたりをジュニアSEと言っていた。自主的に自発的に作業をやっていってもらう。5年、6年目くらいに自分で何でも出来て、1年生を指導しながら作業するミドルSE。そうこうしているうちに10年くらいたって上級SE/シニアSE。全体のプロジェクトを一つ請け負ったりする。たとえば大学にネットワークを入れるときに、何人か連れてきて一斉にクライアントPCのインストールを始めたりする。そういった大きなプロジェクトをやるときに全体の工程管理をしながらシステムを立ち上げるのが早くても7年目。

では、バリバリやって11年目の谷口からお話を。

谷口
おはようございます。入社して11年目のSEで名古屋でやっている谷口と言います。日頃のお仕事を話させていただきながら、SEについて紹介したいと思います。この授業は3日間で2単位ですか?おいしい講義なんでしょうか。

井門さんから営業のイメージの図をいただいたんですが、僕はこれを見て営業はやりたいくないなぁと思いました。あと談合もやってる?やってないんですね。ノルマで大変、接待で大変、夜も朝も働かなければならないと。

山下課長はこんなことを言ってらっしゃったみたい。SEに期待するものとして業務分析ができる。これは必要です。何のことか分からないですよね。顧客要望に対する理解が迅速で的確かつタイムリーな対応。これは必要です。新技術に強いというのもその通り。コンサルティング能力やシステム分析力は必要です。さらに見積もり力が高い、プロジェクトの遂行力が強い、進捗状況のタイムリーな報告。さらにシステムトラブルに対する力。これらを満たすSEがいたらスーパーマンです。しかしSEはこれらをこなさなければならない状況になっています。

私の歩んできた道。11年前に入社。OJTにて官公庁を担当。実際その翌年から名古屋に配属されて、大学以上の学校、研究所を担当させていただいています。去年から業務系・事務システムと呼ばれる部門を担当しています。

実際、みなさんがたとえば富士通に入社してどんなことが待っているか。2週間の新人教育、2ヶ月のSE教育、4ヶ月間の専門教育+OJT。最初は名刺の受け渡しから始まり、電話の取り方、プレゼンテーションの練習ということで人前で話す練習をします。少しはずれますが、富士通がどんな道を歩んで今のような会社になったか。ただ、2週間ですべて学べるわけではなくて、部署に配属されてから学べばいい。給料日は4月26日なんですが、4月14日までに持ってるお金をすべて使い果たしてしまいますので、4月の15日以降どうやって暮らすか考えてるのが富士通の社員。

(休憩10分)

私が入社1年目に東京に配属になり、官公庁を担当しました。7月くらいに大蔵省(今で言う財務省)で人が足りないから来てくれと言われ、新人ながら大蔵省に連れて行かれました。大蔵省は予算編成の時期で非常に忙しいみたいです。そのとき橋本龍太郎さんが大蔵省の方を激励されるそうなので、疲れた顔を見せてはだめということで新人のSEがいかにも元気にしているように見せると。我々新人はあたかもがんばっているかのように見せる、という役をやりました。そのときの大蔵大臣の橋本龍太郎さんのPCが壊れたということで直しについていった。大蔵大臣の部屋は3つに分かれていて、手前に守衛さんが居て、ソファ室があって、大臣室。そのとき絨毯が本当にフカフカなんです。私は何もせず先輩が全部やってくれたんですが、部屋から出たときに自分の靴の汚れが落ちて全部テカテカしていたんです。次にNHKに連れて行っていただいたときの話。エレベーターに乗ったとき、目の前を桑田佳祐が入ってきて私たち2人と、桑田佳祐さんの3人になった。

実際SEはこんな仕事ではありません。商談獲得のための支援。営業さんと一緒にお客さまのところにおうかがいして、お客さまは営業さんに「このPCのメモリはいくつなんだ?」とか言われたとき、営業さんは答えられないので、説明できないことを我々がかわってご説明させていただく。同じく、いいものであればお客さまに提案させていただく。昨日も営業さん言ってらっしゃると思うんですが、我々は仕事をするには仕事を取ってこなければならない。営業さんのフォローをしたりする。

システムの導入から運用。商談が獲得できた時に、実際にシステムを導入していく。導入から運用を我々で面倒をみる。まず行わなければならないのはスケジューリング。いろんなところでいろんな仕事が派生するのでスケジューリングする。お客さまのスケジュールと合うようにしていくのが我々の仕事。次に、システム全体の詳細設計・運用立案。設計から構築から運用までを実際のものを見ていただきましょう。

#スケジュールの図
#テスト手法の説明など。モジュールのテストから、結合テストにもちこむ。

SEが把握しなければならないのはこの赤い線(なにやら月ごとに1本の線が引かれている)。11月にある程度の工程に来る必要があるのに、それが遅れているというのが分かる。

次設計に入りますが、設計のいい資料がないので簡単に。我々が設計資料として出している項目。

//

サービスの概要
マネージドサービス
サービスレベルの管理
サービス実施状況報告

オペレーションサービス
サーバーオペレーション

//

設計の部分で資料を示します。我々が実際に使っているものです。

次に設計が終わると構築とテストに入る。設計にはどういう項目があるかということを洗い出して、そこで、さらにやることをリストアップして作業していく。

テストが終わると運用。実際に使ってもらう。ここで実際に動くのを確認して開発が終わる。色んな人が動いているが、それをうまくコントロールして、自分も実際に働く。
トラブル対応、みずほ銀行のトラブルがあったが、そういう時は、すぐに行って、実際に仕事をする。中身によっては夜中に出勤することもある。
あとはお助けマン。自分ひとりでは解決できないことはたくさんあるので、同僚に聞いたり、逆に聞かれて教えたり、そういう技術の交流をする。

実際に自分がした仕事。
1年目は下っ端なので、しこしこプログラムを作っていた。ドライバソフトを書いていた。インターネットに接続するのに必要なもの。8割は先輩が作って
しばらく経つと、小さなシステムの構築をまかされて、OSのインストールから運用までやる。
5年目では、もっと大きなネットワークの設計などをした。C/S型のシステム。ここでは自分にもスキルがついたし、部下2〜3人ついた。
9年目で全国初のシステム開発。できるだろうと思って、提案したが、お客さんはもっと凄いことを考えていた。ギャップが激しくて、それを埋めていくのが大変だった。

先週一週間の私の行動を表にしてみた。
8時には出勤。そこで自分の仕事をした。それが終わってまた自分の仕事、月曜日は9時くらいには帰っている。火曜日は、お昼からお客様の所に行く。この日も8時には帰宅。水曜日も別のお客さんのところへ行く。会社に戻ってきたのが9時前、それから次の日の資料を作成しないといけない。木曜日、この日は一日中ずっとお客さんのところにいる。

富士通の定時は8:40-17:30だけど定時で帰った試しがない。

会社が求めるSEは、技術に対する適応力のあるSEや学習意欲のあるSE。でもF社が求めるSEは体力のあるSE。

実際にSEになるんだったら、これは当たり前のことですが、まず、自分で悩まずに、分からないことがあれば誰かに聞いてしまえばいい。悩むと物事が先に進まないので、皆が困る。あと、主語と述語を話す。よく述語だけを述べる人がいる。人に伝わるように話すのは大切。あとはメリハリを大切に、こんな生活をしていると体が持たない。課長には申し訳ないが、年に3回大きな休みを取って連絡が取れないところに行ってしまう。メリハリをつけて仕事をする。理解のある人を探す。帰りが遅いので、SEの仕事はなかなか他の人に理解されない。僕も最初カミさんになかなか理解されなかった。あと、逃げないで立ち向かう。一回は努力して欲しい。

これで私の話は以上。


生々しい話になるのかと思っていたが、あっさりしていた。実際、遅くまで仕事していることは多い。確かに私も早く帰ってみようと思うこともあるが、明るい時間に帰ると後ろめたい気分がある。
最近はプログラム書くときにはパソコン使うからわからないが、文字を書くときに、エルとアイがわかるように書いてませんか?

私が大学3年生のころに合ったビジネス。ホームヘルスケア産業、電話転送サービスや、名簿図書館。変わったところ、35mmカメラ、マイコンミシン。

新登場した商品、MSXパソコン。プリンター内蔵テレビ。テレビにプリンターがついている。

この頃に人材派遣が立法化されて、こういった仕事が出てきた。私たちの仕事でも、提案書類の作成など、派遣の方にお願いしている仕事もある。コンパクトディスクが出てきた。これから数年後にソフトが乗るようになった。ある記憶媒体が出れば、あと一年もすると実際にパソコンに搭載されると言うことになる。そういうことをお客さんに紹介したり、商品化を事業の方に働きかけたりするのもSEの仕事になる。

入社した頃は、虎フィーバー。あと、全日空機の墜落事故なんか。

そのころの静岡大学工学部情報工学科。使っていたコンピュータは、FACOM-230、これは大型コンピュータだったが、あとはNECのミニコンを使っていた。紙テープにプログラムを書いていた。このミニコンが4台しかなく、取り合いになってしまう時代。
4年生になったことには、VAX-11、あとUNIXのマシンが入った、ようやくUNIXが入るようになた。やってたことはFortranをやっていた。今でも科学技術計算分野では大切な言語。快適な操作環境のためには、BASICなどを使っていたが、基本はFortranで全部覚えた。

重要なのはこのときに学んだことがどう生きてきているか。今僕ははFortranを使っているわけではない。ここで培った基本、基礎技術。それを大学の時に学んだな、それが生きてきているな、と思った。入社したときは、FACOM Mシリーズをさわっていた、これはIBMのSystem360互換で、巨人に追随しようと言うこと。
アセンブラとか、テスト仕様の作成やテストの実施。この辺は主体的にやっているわけではなく、これをやれ、あれをやれと言われるわけ。

入社から1年間、導入教育がある。基本的な生活のことや会社員としての基礎教育。そこでは、いろんな職種の人と一緒になるので、そこで知り合いになっておくと非常にいい。
SE教育と言うことになっていくと、フィールドに出る人たちを集めて教育をする。この当時、国鉄がJRになった。国鉄で一級建築士の資格があるような設計屋さんと一緒にSE教育を受けたのを覚えている。基本的には座講だが、実際にチームを組んで1つのシステムを作り上げることもある。ある企業を例にとって、分担作業をさせる。先輩が参加して、適宜指導したりする。この頃私の言語はCOBOL。COBOLはあまりやってはいないが、文法さえ覚えてしまえば何てこと無かったので、基礎が生きていると思う。始めは先輩の行ったことをトレースする、それが1年か2年、早い人なら1年でだいたいできるようになる。最後に、教育報告と言うことで、幹部の前でプレゼンをする。こういうことをやりました、と言う形。

入社後、どんどん技術が変わっていった。IBMの独自OSからUNIXになり、Windows全盛から、今はLinuxが主流。システムもメインフレームから、ネットワークモデルになった。ネットワークは、電話線で繋いでいた時代から、いまやブロードバンド、こういう中で、自分の知識を経験から自己学習したり、研修を受けたりして、高めていく。お客さんから、こんなん出ましたよね?、と聞かれたりする。そこで聞かれたことに答えて

今年の新人教育は、基本的には一緒。言語がCやJavaになるとかそういう部分は違うが、基本は変わっていない。

結局環境が変わっても、物を考えるための基礎は一緒。技術的な知識はいくらでも必要な研修がある。だからって何もしなくていいと言うことではないが、若いときは色んなこと覚えられるから、基礎を刷り込んだ方がいい。
あとはシステムの本質を捉えて、目的を持ってシステム化を実現すると言うこと。お金をかければいいと言うわけではない、何が実現できるか、性能が上がったことで企業のビジネスに何のメリットがあるか、とかそういうことを考えないといけない。稟議をコンピュータ上でやるとき、一人一人の作業量が増えるので嫌う人もあるが、全体としては最適化できると、そういうこと。

プロジェクトと言うことで言えば、SE以外にも、営業やCEや工事の人も参加している。SEは主にソフトウェアを担当する。プロジェクトのマネジメント自体は営業がやるかもしれないが、コンピュータはソフトウェアやハードウェアの組み合わせだから、SEがいないとシステムは動かない。そこでSEのイメージとしては、システムの管理者と言うことを考えてもらっていい。

営業とSEと言うことで言うと、営業が、これはSEも一緒のことがあるが、お客さんから相談される。その時点で商談が発生している。そこで営業からSEに技術的な相談が来る。そこで提案を出して、うまく行けば、契約をしてもらえる。だめなら初めから。そこから営業は調整役に回り、実際の構築はSEが主導していく形になる。仕様を確定し、製造し、テストをして、納入することになる。うまく動いていれば検収される、だめならやり直し。最後に利用指導や運用支援をしていく。そうやってまた、改善や拡張の提案をして、また商談になっていく。

サポート体制と言うことで言うと、担当営業が窓口になって、その下にSE、CE、施設なんかの担当が体制を作っている。富士通ではSEがハードウェアを触ってはいけないことになっている。もちろん単純な部品交換なんかはいくらでもできるが、何かあったときの保証が困る。ハードウェアはCEが触ることになる。

プロジェクト体制としては、管理者がいる。始めは開発担当の部分に入ることが多いと思う。ものは東で使うが開発は西、と言うこともある。

大学の事務システムを構築するときを例に取ると、開発側と発注の大学側で合議体を作って、そこで進捗会議をするようなプロジェクトの進め方もある。あまりたくさんの人数が入ると会議が進まないので少人数の会議がいい。会議の推進方針も提案する。会議のペースや、キックオフはいつか、要件分析はいつまでか、仕様の検討などはいつまでか、製造はいつまでか、という提案をどんどん出すのもSEの役割。
システムのリプレースの例。ネットワークシステム構築の際、富士通が担当する仕事の範囲の提案など、主にサポートだが、これもSEの仕事の例。こういうことはインフラを得意にしているSEが担当することになる。
定期サポートやシステム管理も提案する。

SEの仕事としては、要件分析からプロジェクトマネジメントまである。担当する仕事によって、呼ばれ方が違う。
会社に入ってまずやるのはたぶんプログラマだと思うが、そこからコンサルタントやアナリストに進んだりとか、色々な道がある。

運用面でのサービス提要

SEの種類ということで、情報サービス企業としてはいろんなサービスを提供していますと言うこと。SEには色んな種類があるので、どの道に進みたいかな、と考えてもらう。といっても、適性のことはわからないので、入ってから考えればいいこともあるし、そういう制度があるので、将来のことはあまり心配しなくてもいい。

最後にSEとは、システムを構築することによって効率的な仕事ができるようになるわけだが、そういうことをきっちり伝える、お客様が知りたい情報をいかに伝えられるか。私も行った先で、いきなりこれについて聞きたい、と言われたことがある。答えられなければ、話術で対処する。
やって欲しいことの一点としては、コミュニケーション能力のこと。

最初に話した彼が、SEは体力だと言っていたが、もちろん頭も使う。仕事の仕方にしても人それぞれ。

(午後の部)

廣田
午後はキャリアパスと教育・資格について。キャリアパスってのは将来的に自分がどういうことをやりたいか、そのために何をやっていくか。短いスパンで考えたり、長いスパンで考えたり。5年後、10年後に自分が何をやりたくて、そのために何をやっていったらいいか。

3年後、5年後、10年後に何をやりたいか。今なら皆さん学生。3年後は就職か進学か。今から3年後自分がどうなりたいか考えていってください。そのために経験を積み、能力を高めてほしい。富士通の場合は社内公募があり、今とは違う仕事をやっていくことができる。研究開発していた人が現場に出てSEとして活躍するなど。常時100人くらい募集している。面接してそこからOKが出れば異動になる。必ずしも行った職場で「ここはあっていない」と思えば職場を変えることができる。

キャリア。今ある自分から将来の自分。右へ行ったり、左へ行ったり。最短経路で行くのが望ましいけれど、入ってすぐは自分が何に向いているのかも分からない。最初は我慢してやってみて、少ししたらやりたいことが見えてくる。我慢することはひとつで、やりたいことを考えていくつかのプロジェクトをこなす。配属された部門でやることは決まっていく。私が属しているのは文教システムで大学さんが相手。よくやられるのは皆さんが使う端末、教育システムをどう組んだらいいか。大学はどんどん新しいことをしていく。去年とはまた違うやり方に取り組んでいく。サーバーにプログラムがあってそれを動かすことから、サーバーと連携するためにプログラムを組む。最近はWebを介した教育システムがはやり。たとえば、Webをやって電子商取引のシステムを作りたい、と移っていくようなやり方もあると思う。

基本的にはその職場にあった教育を受けていく。大学でも今でこそPCやオフィスをおしえたりする。そういったところだけでなく、財務会計を勉強したりできる。その時点では関係なくても。会社に行くと自分がついた仕事が流通だったり、公共だったりすると経理が分かっていないと出来ない。

プログラムにもいろんな工程がある。外部仕様、プログラム構造設計、製造分担、プログラムテスト…。最初に来るのはコーディング。すでに作られたプログラムのメンテナンスだったり。

#工程の説明。外部設計からプログラムから実際の運用テストまで

ホットな話題では県庁の税システム。1年間で100人のSEが10ヶ月働く。100人が同じもの作るのではなく、別々のものを作って結合。それぞれの部品はSEにまかされている。

新人のレベルだとどこに着くかは分からない。コーディングかもしれないし、結合テストかもしれない。その人の能力と経験によって任される仕事が変わってきます。

さきほど私の経歴を紹介しました。1年目は情報処理技術者試験の資格を取りました。当時は情報二種とか呼ばれてた。特殊ってのは5年以上の経験が必要だったので、最初はまず基本情報。直接その資格が自分の業務に関連するかといえば…そうではなかったですね。3年目、4年目に社内資格だったんですがエキスパート資格を取りました。実際何に役たつかというと、「私はこういった資格をもっていますんで、この範囲の仕事は任せてください」ということになる。それからネットワークのエキスパート。それが私にとってはひとつのキャリアであり、キャリアパスでした。

大学のときなんとなくSEになろうかと思ったのが、3年か4年です。先生に相談しながら「SEになりたいんですけど、どうすればいいですかね」と先生に話した。「まあ、なってみたら」と言われてなったのがきっかけですね。

入社して1年目のときに「何がやりたいの?」と言われた。そのとき「とにかくでっかいマシンさわりたいです」というのが5年目くらいでさわることになった。自分のやりたいことを言って損はないです。言ったほうが得です。後から「そうじゃなかったんだけど…」といっても後々きいてきます。自己主張するようにしましょう。本当にやりたいことは見つからないかもしれない。

必須になったスキル。1年目は言語やフローチャート。顧客スケジュール管理。3年目ネットワークをやったので通信制御装置。通信の特性が分からないとどう動かしていいかわからない。アーキテクチャに関するスキルをためていった。標準のプロトコル関連の技術。今ですといろんなレポートが出ていますが、標準的なプロトコルをちゃんと使っていることを意識するようになったのが3年目。4年目にTCP/IPの基本技術を身につけた。こういった技術は会社に入ってから学んだ技術です。私はそのときネットワーク屋やソフトウェア屋になりたいと思っていたわけではなかった。ただ「でかいコンピュータさわりたい」だけだった。4年目くらいに、ちっちゃいコンピュータもたくさんつなげばでっかいのにかなうじゃん、と思うようになった。その後スパコンにさわって。7年目になると開発工程や業種業務をみながらすすめていくことにした。それまではシステムの組み合わせが楽しかったけれど、7年目からはシステム開発が楽しくなってきた。そこで業種業務の知識が必要になってきた。旬の技術もあるので早ければいいわけではないけれど、今自分に関わりないけれど将来的に必要だから覚えるというのは大事だと思います。

僕が大学に入ったときには二次試験で英語がなくて楽だなと思って入った。今でも英語は得意ではないですが、技術文書読むときは英語が必要です。いきなり英語で電話がかかってくることもある。そうするとだんだん英語は必要かな。うちは会社の中でTOEICを受けさせられます。というわけで皆さん英語がんばってくださいね。

スキル習得のために。学生時代のベーシックなスキルは重要です。今やっていることは直接的に役立ちはしませんが、学んでいることの本質を身につけられる。

自分自身をみがくことも必要ですが、自分自身を知るのも学生時代にできることのひとつ(自分がどれくらい飲めるか、とか)。

学校みたいにカリキュラムがあって学習する方法ではない。自分で選んで学んでいく。それが社会です。それで不安がる必要はないので、体制が整っているのでどんどん学習してくれたらいい。上司・先輩。ちゃんと見ててくれる人もいれば、ほっといておく人もいる。先輩はその道を経験しているのでいろいろおしえてくれる。上司だと年が離れていて感覚のズレがあったりする。ただ仕事のやり方は正しい方法を知っている。

顧客とのコミュニケーション。お客さんの方がよく知っている場合があります。業務に関する知識はお客さんの方がずっと上、という場合があります。相手の顔色を読む、心を読む、話半分でいいのか見極める。友達と話しながら「こいつ何考えてるんだろう?」と考える。

情報処理技術者試験。これは割とキャリアパスにそっています。

#情報処理技術者試験とキャリアパスの関係の説明

基本は基本情報処理から。

結局経営陣にとってはシステムを入れて何が得になるのか。そこを見極めていくのが役割。

これはWebからもってきたのですが、小学館が出している教科書とキャリアパスの一覧。いろんなキャリアとステップがある。

富士通のキャリアパス。

#トレーニーに始まり、アソシエート、その上から分野別。スペシャリストで、シニア、マネージャーへ。
#資格をもっていないと給料にひびくことも。経験がないと次に進めない資格もある。コンサルタント資格があってもしばらくコンサルタントの経験がないと剥奪されたりする。持っているものについては経験と知識が評価される制度。

キャリアパスの適用。最近の新聞で富士通はいい数字を出していませんが、SE部門はある程度の利益を出しています。それなりに伸びがあります。これからもSEの仕事は増えます。全体の社会の伸びに対して、富士通の伸びがどれだけ伸びているかが会社の成績なんで、それなりの仕事量はあります。

#廣田さん社長になる発言!?

企業が求めるSE。新しい技術に適応力をもって、興味関心があって、学習意欲が高い人。既存の技術だけじゃ食べていけない。新しいものをどんどん吸収していく。今やっていることは勉強の基礎だから役に立つ。勉強に立ち向かう。できなくても「やってみます」「やれます」と言える人が残ります。

魅力的なSE。技術的なことだけでなく、顧客と綿密な交渉ができる人。転職がにぎわっていますが、技術力が高くてもやっていけない人もいる。製造・金融・流通に精通した人は特に要望が高い。外資系のIT企業の人材会社の話。エンジニアでも技術しか知りません、やりません、では厳しい。営業と行ったときに、相手を納得させるために「こいつはよく知ってる」と思わせることができるか。

魅力的なSE。アンテナを高くもったSEになってほしい。それによって情報をキャッチする。新技術に興味をもっていく。相手が何をいわんとしているかを見つける、考える。それは友達つきあいの中でやっていけると思う。技術をもっていてもそれを難しい言葉で言ったら分からない。システム技術以外の業務技術も身につける。新入社員のときは宴会を運営することが多い。

資格とかそういったところの前に、富士通のHPを紹介します。jp.fujitsu.com 採用のところに色々書いてある。SEの部門ソリューション事業本部のほかに色々あるが、本部の下に会社を持っている。採用情報があるが、新卒採用を見ると、ウチの制度とかも乗っている。人事制度のところは新しくなっている。資料を作った段階では乗っていなかった。富士通の人事制度は実力主義、成果評価制度がある。あとは、SPIRIT勤務制度、これに入った人は時間の管理がされなくなる、成果さえ出せばいい、そういう勤務制度もある。社内転職の仕組みもある。成果評価のところを見ると、上期と下期にわかれて、それぞれ目標を上司と面接で相談して立てる。ただし、その人の経緯をみてどれだけ評価したか、ということも評価される。仕事によっては、半期で終わらないものもあるので、来年に向けての活動など、そういう部分を柔軟に評価する。これで、自分がどの程度の評価を受けたかがわかる仕組みになっている。人事考課が見える。いい制度だと思う。必ずしも万能ではないと思うが。SPIRIT勤務制度は、どういった形の職場にその人を置けばいいか、勤務体系、例えば、時間をかける人と、短期間で成果を出す人もいる。そういった違うタイプの人は勤務時間、勤務体系に違いが出たほうがいい。もちろん自己管理ができないとダメなので、入社してすぐは難しい。この制度ではボーナスの査定なんかに効く場合が多い。
3年生には、インターンシップ制度というのもあって、それぞれ募集がされている。交通費なんかが出る。仕事を決めて、そこへ行って実際にしてもらう。先にインターンシップに入って、評価をされれば、当然、実際の就職のときは有利になる。東京のソリューション本部と仕事をしていたとき、インターンシップの人が入っていた。色んな意見を出してもらって、生きがいいね、きっとその人がうちを受けたら◎だね、と言う話になっていた。

それでは最後のお話に移ります。さっきもSEの仕事を紹介しました。システム開発なんかも入るとやらされる、できない、とかいうことは行ってられない。実際、仕事にどの程度の時間を使うかというのは悩むと思うが、仕事ができる人は5時で帰れる。不安にならないで下さい。仕事はやればやるほどできるようになる。

大学時代に身につけて欲しいこととしては、基礎知識。技術の動向に追いついていて欲しい。あとは日経新聞なんか読んで、今のトレンド、動向、これを知っていたほうがいい。必須ではないと思うが、これがあると入ってから楽。これは、手取り足取り教えてくれるわけではないですからね。ただ、本当にわからないときはちゃんと聞くべき、仕事の質に関わってくるので。コンピュータ用語なんかは雑誌とか読んで、頭に残る程度でいい。基礎知識は大学のカリキュラムで身につければいい。アルゴリズムも個別のパターンを覚えるのではなく、そういうものがどうして必要なのか、とかそういうこと。ハードウェアもそう。こういうことは、性能を出せと言われたときに効いてくる。例えばディスクアクセスの効率上、どこに情報を置いておくのが一番効率がいいのか、とか。そういう基本的な考え方。HDDにヘッドがある、とか、そういうことは把握しておいて損は無い。そうでないと後から色んなことを言われてもわからなくなってしまうから。
生活する中で、こんなコンピュータがあったらいいな、と思うことがあると思うが、それがシステム的な発想につながってくる。例えば切符買うにしても皆自動販売機で買うが、あれはどうやって動いているのか、もちろんいつもそんなことを考えているわけでないが、駅員さんに買うときのやりとり、そういう動きが自動販売機の中にあるわけですね。お金が足りないときにはどうなるのか、駅員なら言ってくれるが、自販機では表示が出ないとわからない、と、そういうこと。
お客さんは最終的にこういう事をしたいんだ、と言うが、こういったケースもありますね、こういったケースもありますね、という風な例外のことも考えておかないと、予想以上に時間を食ったりする。バラエティに富んだ考え方をしてもらうことが必要。あとは、成果物、ドキュメントの重要性。大学では動いて終わりだと思うが、企業ではそれは当たり前。企業ではひとりがその仕事をいつまでも抱えているわけではないので、そういうことをしっかりやらないといけない。プログラムを書いている時間よりも、ドキュメントを書いている時間の方が長い。
豊かな知識、新しいことを考えるためにはやはり知識が必要。あとは直観力。これは難しいが、さっきの自販機の話で行くと、お金をばらっと入れられるものがあるが、要はそうやって入れたいと言う発想だが、そういうこと。
お客さんの言いたいことをわかるということ。お客さんの考えていることがわかってそれをする、ということと、そこからさらに提案すると言うこと。
相手に話が伝わらないのは、それは自分だけの言葉で話しているから。相手の言葉で話さないとわからない。今はある意味では皆同じような能力があるが、そこだけで通用していないか、ということ。家庭教師などに行けばわかるが、相手に伝わる言葉で話さないといけない。会社に入ってからもよくいるが、困っている状況だけ説明する人がよくいる。何がして欲しいのかを言わない。どうして欲しいのか、相手に何を頼むのか、自分の気持ちを伝えることが大事。自分はどういう状況にあって、どうして欲しいのか、そういうことをまず自分の中で整理していないと状況だけ説明することになってしまう。

そういった能力を持ってもらうと共に、資格。国家資格とかベンダー系とかある。これらはもちろん会社は言ってからでとってもらえばいいんだが、持ってきてもらってくれてうれしいのは、やはり基本情報処理技術者試験やベンダー系の資格。富士通では必須ではないが、これらを持っているほうが有利になる会社もある。資格をとっているという前向きの姿勢を評価される。資格=能力ではないのは当たり前。
IT関連の資格だけではなくて、TOEIC、この点数で門前払いを食らわせる会社もある。そういう風潮もあるので、やっておいて損は無い。簿記や税理士など、これはいきなりとれと言われても難しいが、知っていると非常に重宝する。だから、SEになっている人で、情報系ばかりではない。文系の出身者もSEになっている。SEから営業になる人もいる。文系出身者と言うのは強みがある場合もある。その後のシステム的発想と言うのは理系の方が有利かもしれない。私も経理系の資格を持っていないが、そういう仕事をしている。富士通にもそういうことに通じている人はあまりいない。だから公認会計士と一緒に仕事をしたりしている。持っていないといけない資格はそれほどあるわけではない。

富士通の社内教育制度がいくつかある。スキルネットと言うのは、その人の能力を全部入れてしまう。その人の経験やスキル、いわゆるキャリアを入力する。それを公開することもできる。そこでお呼びがかかったりする。例えば資格が取れた段階で入れる、と。これが意外とバカにならなくなってきていて、ここで公開されている経験をベースにして、上位の職種についていったりとする。
あとはネットキャンパス、これは教材が提供されている。
あとは富士通ユニバーシティ。教育制度は2本柱、SEの技術力を高めるための教育、あと社員としての能力を高める教育。1年目で導入教育。2-3年経つとジュニアトレーニング、文書の書き方などを合宿でトレーニングする。7-8年でシニアトレーニング、これも合宿。ここでは違った部門の同年代の人と付き合うことができる。知り合いになって、その先で連絡を取ることもある。私はついこの前幹部社員教育で、CD-ROMのビデオを100時間も見た。それで感想を書く。最近はe-Learning系の教育が主流。業務知識とは別の教育体制もあるということ。富士通ユニバーシティもそういうところがある。で、35歳定年説と言う話があるが、そんなことは無い。結局SEには色んなタイプがある。技術のことを追っかけるのは辛くなってくるということも確かにあるかもしれないが、その年になったらそれ相応の、プロジェクトをどう動かすか、ということもある。もちろん技術を追っかけている人もいる。要はやり方が、自分に向いているかどうか。それについてもキャリアパス、3年後5年後10年後に自分がどんな仕事をしていたいかと言うのが描けるか。もちろんそれが絶対ではないが、自分のライフスタイルを考えて、進路を見つけておくと言うのも、皆さんの段階では重要だと思う。

SEになりたくないぞと思った人もいるかもしれない。私はこういう仕事をしているので、しかもOBなので、できれば同じ道にたくさんの人が入ってきて欲しい。もしかするとこれから皆さんとお会いする機会があるかもしれない。別会社に入ったからといって、ライバルと言うばかりではなくて、一緒に仕事をする機会もある。今日の出会いを大切にして欲しいと思う。だから会社に入って私を見かけたら、是非声をかけて欲しい。そういう出会いを大切にして欲しい。


このページは,2002年に静岡大学情報学部において行われた集中講義・情報学特別講義IIIの記録です。著作権は講師(発言者)に所属します。