■放送教育
●定義
【教育工学事典】
放送教育とは、放送を利用して行う教育活動をいう。
しかし歴史的には、学校を対象とした活動を主として放送教育といっていた。
【「放送教育の理論と実践」多田俊文】
教育基本法・学校教育法の趣旨にのっとり学習指導要領に準拠して、学校教育の基本的、具体的な ねらいを実現するために、学校で教師の指導のもとに視聴することを予測して、幼児・児童・
生徒という特定の対象に対し、彼らの発達的特性を配慮しながら、テレビ・ラジオの特性を 発揮させた独自の価値観をもつ教材を、組織的かつ断続的に提供することによって、学習
ならびに指導の効率を高め、他の方法ではえがたい経験を提供するもの
●放送教育の歴史
☆放送教育におけるラジオ史
1895 無線電信機(マルコーニ)
1920 ラジオ放送開始(米ペンシルバニア州ピッツバーグの商業放送局より)
〜1924 ヨーロッパ主要国・ニュージーランド。オーストラリアなどで放送が始まる
1924 BBC(英国放送協会)が学校向けのラジオ放送開始
1925 日本でラジオ放送開始(東京・芝浦の仮放送所より)
1930 「教育放送実施」について4項目を決定
二重放送の試験放送を開始(小学生に対する放送は見送られる)
1931 小学校5・6年生を対象にした試験放送
1933 大阪中央放送局により、継続的な学校向けの放送が始まる
1934 週刊『教育放送通信』を大阪放送局管内の小学校や教育関係者に無料配布を始め る
1935 全国向けの学校放送が開始(放送開始10周年記念行事として)
幼児向け番組「幼児の時間」スタート
1941 学校放送が正課として文部省に認められる
1954 「お話でてこい」スタート
☆放送教育におけるテレビ史
1926 高柳健次郎がブラウン管に「イ」の文字を送信
1953 テレビ放送開始
「こどもの時間」
1956 「みんないっしょに」「にんぎょうげき」(NHK)スタート
1959 1月NHK教育テレビジョン放送開始
4月皇太子と美智子妃結婚−パレードをテレビ中継
民法の教育専門局(教育・教養番組30%以上)として、日本教育テレビ(NET、
現 全国朝日放送)が設立
同年 「おかあさんといっしょ」(NHK)
「山の分校の記録」
1960 カラーTV放送開始
1962 NHKのTVの受信契約1000万突破。普及率48,5%
1963 初の日米間TV宇宙中継
1969 アメリカの宇宙船「アポロ11号」が月面着陸、TV中継
「セサミストリート」(米)
地域内ローカル放送局の放送によるTV教育放送が実施
1975 「みどりの地球」スタート
1981 「放送大学学園法」成立⇒1985年度に開講
1984 放送衛星(BS)試験放送開始⇒本放送 86年12月開始
1993 「ひらけ!ポンキッキ」(フジテレビ)
1998 「インターネットスクールたったひとつの地球」スタート
●現在の放送教育
・・・NHKの場合(学校放送ONLINEより)
教育テレビ・ラジオ第2放送・FM放送・衛星第2チャンネルで放送されている幼稚園・保育所向け番組・学校放送番組・教育番組は、テレビで60番組、ラジオで21番組にのぼります。さらに教育テレビの深夜の時間帯に「ETVライブラリー(学校放送ライブラリー)」としてこれまでに放送した番組をアンコール放送しています。
発足当時は1日4時間27分の放送量だったが、現在は週70時間、(一日に換算すると10時間)が割り当てられている。
新設された「総合的な学習の時間」、教育の現場に押し寄せるデジタル化の波。 NHKの学校放送・教育放送でも、「情報」「環境」「国際理解」をテーマにした多くの新番組が始まりました。また、NHKの保有する貴重な映像資料を学習用にデータベース化した「NHK学習動画データベース」を使って、子どもたちから電子メールなどで寄せられる質問に答えるQ&A形式の番組も始まっています。また、放送を中核に、学習動画データベースやホームページを使い立体的に学習することが出来る「デジタル教材」の開発も始まっています。
「みどりの地球」(1975)からはじまり、20年以上つづくNHKの環境教育番組の蓄積とノウハウを活かして、1998年、「インターネットスクールたったひとつの地球」がスタートする。この番組は、それまで教室の中で繰り広げられていた意見交換や調べ学習をインターネット上で可能にした最初の学校放送番組である。同番組は、月1回の生放送もはじめるなど、全国の学校とスタジオを結ぶ、さらなる双方向性を目指している。
「NHK学習動画データベース」は、「おこめ」からスタートした。現在デジタル教材を配信しているのは「おこめ」「川」「びっくりか」「人間日本史」「ふしぎいっぱい」の5番組となっている。
●先進国の放送教育(水越敏行)
・デジタル放送によって、個人のニーズや能力にあわせた指導と、戻りの情報が受けられるようにした(英国BBC)
・社会科の番組などでは、従来からの一方構成、広はん性を生かし、その後の発展や深化は、 学級に任せる方式がとられており、生徒の意見などは電子メールやホームページで交流させる方法がとられている(英国BBC)
・放送番組と指導案とサブ教材をセット化して、カリキュラム開発センターなどから 配送している例が多い。この際、退職した教師たちが番組の選定、メディア・ミックス
の仕方、指導案の組み立て方などを丁寧に助言している(アメリカ)
・フルデジタルの教材、すなわち番組と電子辞書と掲示板がセット化された教育ソフトが有効になるのでは・・・そしてそれは、NHK『おこめ』がねらうものと
共通する方向である。(北欧)
●セサミストリートの誕生
・1960年代の「公民権運動」を背景に「ヘッドスタート計画」が開始される。
アメリカの少数民族の子ども達の多くが、義務教育就学の段階でつまづいて しまう。貧困かつ文化的に恵まれない家庭の子どもの学力が低いのは、
貧困かつ文化的に恵まれない家庭の子どもの学力が低いのは、小学校入学前から 差がついているからである。その差をなくすためには、すでに各家庭にいきわたって
いるTVを使って、先(head start)知的教育を浸透させる環境を作ることはできないか、 これがプログラムの狙いであった。
(「メディアと教育」より抜粋)
1967年、連邦政府は民間財団と協力してCTW(Children's Television Workshop) を設立。子どもの教育のためのテレビ番組の開発と政策を目的とする非営利団体。
ここで2年間の準備期間がおかれ、番組開発の各段階で、専門家による幼児に関する 研究調査が徹底して行われた。
(sesame workshop : http://www.sesameworkshop.org/ )
【セサミストリートの特徴】
・TVコマーシャルの「スポット・メソッド」を利用
・短いセグメントの組み合わせ
・教育と調査研究の専門家とTVプロデューサーの協力体制
【セサミストリートの影響】
・NHKでは心理学者・調査専門家・番組制作者による「2歳児テレビ番組研究会」が
組織され、「パジャマでおじゃま」などの新しいセグメント企画が誕生。
・フジテレビでは、「ひらけ!ポンキッキ」がセサミストリートの直接的な影響のもとに
作成される。
【セサミストリートの評価】
(賛成)・「教育と娯楽をみごとに結びつけた」
(批判)・「操作された刺激の洪水・・・」
CM手法による刺激によって、ほんものの「知的認識」に到達できるのか?
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