福田の勉強レポート
■情報教育・視聴覚教育・放送教育の違い
情報教育
視聴覚教育
放送教育
情報教育とは、情報化の進展・学校教育の役割の変化に伴って必要になった情報活用能力(「情報活用の実践力」「情報の科学的な理解」「情報社会に参画する態度」)を育成するための教育である。
教科教育と同等に位置付けるべきものである。

視聴覚メディアを利用した教育のこと。
これは情報活用能力の育成が目的なのではなく、既存教科の教育目標を達成するための手段(効果的な指導方法)である。


放送を利用して行う教育のこと。
視聴覚教育の中のひとつ。これも、教師が効果的な指導方法のひとつとして利用することで、学習ならびに指導の効率を高め、他の方法ではえがたい経験を子どもに提供するものである。


■視聴覚教育

● 定義

視聴覚メディアを利用する教育方法の総称。
視聴覚メディアの利用やメディア開発などのメディア単体の利用から、コンピュータや マルチメディアなどの新しいメディアを含む授業設計、教育メディア環境の設計など より広い概念としてとらえられるようになった。
(教育工学事典)
  
・形態的定義「学習指導の改善のために視聴覚教材・教具を活用した教育」
・機能的定義「知識や技能の形成のために感性的具体的経験を付与した教育」
・教育工学的定義「教育行為を最適(効果的)とするために、画像メッセージと言語メッセージ
との特質を明らかにし、これを具体化として教授メディアの製作、選択、 および利用を主たる課題とする教育理論・実践の分野」
(中野照海)
 

●用語解説●
【視聴覚メディア (audio-visual)】
「視覚(目)と聴覚(耳)の感覚を用いて伝えるメディア(媒体)」
 
・・・具体的な例・・・

印刷物・写真・図・絵・ポスター・実物の兵法・模型・紙芝居・黒板の板書・スライド・ OHP(オーバーヘッドプロジェクタ)・オーディオカセット・CD・ ラジオ・テレビ・ビデオ・映画・コンピュータディスプレイ・大型ディスプレイなど・・・
  
【マルチメディア】
「文字・写真・音声、映像などがコンピュータ上で継ぎ目なく結合化された環境。ディジタル技術によって実現された情報環境を示す。」(教育工学事典)

(1)多様な情報様式がディジタル化されていること (2)インタラクティブであること (3)多様な情報様式を単独な情報として扱えるインタフェースをもっていること (4)多様な情報様式を統合化することで、個々の情報様式以上の付加価値が得られること                         
                              (中村直人,1997)
   
※テレビはインタラクティブ性にかけ ており、マルチメディアには含まれない。

●歴史
   
背景・・・教育における直感主義の教育観。

直感主義教育は、当時の言語中心の教育に対して、子どもの感覚や経験に 訴える教育の重要性を主張した。これらの流れは、「言葉よりも先に物事」 という経験主義教育に受け継がれた。
   
    A.フランシス・ベーコン      感覚論的・帰納法的認識論
    B.コメニウス            感覚的実学主義
    C.ルソー              直感教授、言語主義の批判
    D.ペスタロッチ           直感教授法の定式化 「直感は認識の絶対的基礎」
    E.ケルシェンシュタイナーなど  労作教育
    F.デューイなど           経験主義教育

●これからの視聴覚教育(課題/関心)

これまで視聴覚教育は、視聴覚メディアの開発と利用に焦点が置かれてきた。 そこでは一斉授業でのメディアの利用やメッセージの研究がなされてきた。 しかし、ネットワークでコミュニケ−ト情報の形態は多様なシンボルが複合される新しい 表現形態となり、伝統的な視聴覚メディアを超えたマルチシンボルの表現と伝達が これからのコミュニケーションリテラシーのに必要となる。 映像と文字の対比ではなく、これらが統合されたメディア表現が教育と研究の課題となる。(教育工学事典)
   

これまで視聴覚教育では、画像による豊かな経験や、望ましい態度の育成などに 力点を置いてきた。映画やテレビ等による学習効果の研究では、知識の獲得を課題と するものが圧倒的に多かった。しかし(現在の関心は)現代の教育の課題である、 学習意欲の向上や、望ましい態度の育成に関する、いわゆる、人間の情意の領域での 教育効果に重点を映してきている。いわば、視聴覚教育の歴史的関心の回帰といえよう。(中野照海)
 

■放送教育

●定義

【教育工学事典】
放送教育とは、放送を利用して行う教育活動をいう。
しかし歴史的には、学校を対象とした活動を主として放送教育といっていた。
 
【「放送教育の理論と実践」多田俊文】
教育基本法・学校教育法の趣旨にのっとり学習指導要領に準拠して、学校教育の基本的、具体的な ねらいを実現するために、学校で教師の指導のもとに視聴することを予測して、幼児・児童・ 生徒という特定の対象に対し、彼らの発達的特性を配慮しながら、テレビ・ラジオの特性を 発揮させた独自の価値観をもつ教材を、組織的かつ断続的に提供することによって、学習 ならびに指導の効率を高め、他の方法ではえがたい経験を提供するもの
 

●放送教育の歴史
 
☆放送教育におけるラジオ史

 1895 無線電信機(マルコーニ)
 1920 ラジオ放送開始(米ペンシルバニア州ピッツバーグの商業放送局より)
〜1924 ヨーロッパ主要国・ニュージーランド。オーストラリアなどで放送が始まる
 1924 BBC(英国放送協会)が学校向けのラジオ放送開始
 1925 日本でラジオ放送開始(東京・芝浦の仮放送所より)
 1930 「教育放送実施」について4項目を決定
      二重放送の試験放送を開始(小学生に対する放送は見送られる)
 1931 小学校5・6年生を対象にした試験放送
 1933 大阪中央放送局により、継続的な学校向けの放送が始まる
 1934 週刊『教育放送通信』を大阪放送局管内の小学校や教育関係者に無料配布を始め      る
 1935 全国向けの学校放送が開始(放送開始10周年記念行事として)
      幼児向け番組「幼児の時間」スタート
 1941 学校放送が正課として文部省に認められる
 1954 「お話でてこい」スタート
 
☆放送教育におけるテレビ史

 1926 高柳健次郎がブラウン管に「イ」の文字を送信
 1953 テレビ放送開始
      「こどもの時間」
 1956 「みんないっしょに」「にんぎょうげき」(NHK)スタート
 1959 1月NHK教育テレビジョン放送開始
      4月皇太子と美智子妃結婚−パレードをテレビ中継
      民法の教育専門局(教育・教養番組30%以上)として、日本教育テレビ(NET、
      現 全国朝日放送)が設立
 同年  「おかあさんといっしょ」(NHK)
      「山の分校の記録」

 1960 カラーTV放送開始
 1962 NHKのTVの受信契約1000万突破。普及率48,5%
 1963 初の日米間TV宇宙中継
 1969 アメリカの宇宙船「アポロ11号」が月面着陸、TV中継
       「セサミストリート」(米)
      地域内ローカル放送局の放送によるTV教育放送が実施
 1975 「みどりの地球」スタート
 1981 「放送大学学園法」成立⇒1985年度に開講
 1984 放送衛星(BS)試験放送開始⇒本放送 86年12月開始
 1993 「ひらけ!ポンキッキ」(フジテレビ)
 1998 「インターネットスクールたったひとつの地球」スタート
 
●現在の放送教育

・・・NHKの場合(学校放送ONLINEより)

教育テレビ・ラジオ第2放送・FM放送・衛星第2チャンネルで放送されている幼稚園・保育所向け番組・学校放送番組・教育番組は、テレビで60番組、ラジオで21番組にのぼります。さらに教育テレビの深夜の時間帯に「ETVライブラリー(学校放送ライブラリー)」としてこれまでに放送した番組をアンコール放送しています。

発足当時は1日4時間27分の放送量だったが、現在は週70時間、(一日に換算すると10時間)が割り当てられている。

新設された「総合的な学習の時間」、教育の現場に押し寄せるデジタル化の波。  NHKの学校放送・教育放送でも、「情報」「環境」「国際理解」をテーマにした多くの新番組が始まりました。また、NHKの保有する貴重な映像資料を学習用にデータベース化した「NHK学習動画データベース」を使って、子どもたちから電子メールなどで寄せられる質問に答えるQ&A形式の番組も始まっています。また、放送を中核に、学習動画データベースやホームページを使い立体的に学習することが出来る「デジタル教材」の開発も始まっています。


「みどりの地球」(1975)からはじまり、20年以上つづくNHKの環境教育番組の蓄積とノウハウを活かして、1998年、「インターネットスクールたったひとつの地球」がスタートする。この番組は、それまで教室の中で繰り広げられていた意見交換や調べ学習をインターネット上で可能にした最初の学校放送番組である。同番組は、月1回の生放送もはじめるなど、全国の学校とスタジオを結ぶ、さらなる双方向性を目指している。
「NHK学習動画データベース」は、「おこめ」からスタートした。現在デジタル教材を配信しているのは「おこめ」「川」「びっくりか」「人間日本史」「ふしぎいっぱい」の5番組となっている。

●先進国の放送教育(水越敏行)

 ・デジタル放送によって、個人のニーズや能力にあわせた指導と、戻りの情報が受けられるようにした(英国BBC)
 
 ・社会科の番組などでは、従来からの一方構成、広はん性を生かし、その後の発展や深化は、 学級に任せる方式がとられており、生徒の意見などは電子メールやホームページで交流させる方法がとられている(英国BBC)
  
 ・放送番組と指導案とサブ教材をセット化して、カリキュラム開発センターなどから 配送している例が多い。この際、退職した教師たちが番組の選定、メディア・ミックス の仕方、指導案の組み立て方などを丁寧に助言している(アメリカ)
  
 ・フルデジタルの教材、すなわち番組と電子辞書と掲示板がセット化された教育ソフトが有効になるのでは・・・そしてそれは、NHK『おこめ』がねらうものと 共通する方向である。(北欧)


●セサミストリートの誕生

 ・1960年代の「公民権運動」を背景に「ヘッドスタート計画」が開始される。
  
アメリカの少数民族の子ども達の多くが、義務教育就学の段階でつまづいて しまう。貧困かつ文化的に恵まれない家庭の子どもの学力が低いのは、 貧困かつ文化的に恵まれない家庭の子どもの学力が低いのは、小学校入学前から 差がついているからである。その差をなくすためには、すでに各家庭にいきわたって いるTVを使って、先(head start)知的教育を浸透させる環境を作ることはできないか、 これがプログラムの狙いであった。
                                     
(「メディアと教育」より抜粋)
  
1967年、連邦政府は民間財団と協力してCTW(Children's Television Workshop) を設立。子どもの教育のためのテレビ番組の開発と政策を目的とする非営利団体。 ここで2年間の準備期間がおかれ、番組開発の各段階で、専門家による幼児に関する 研究調査が徹底して行われた。
(sesame workshop : http://www.sesameworkshop.org/ )
  
【セサミストリートの特徴】
  ・TVコマーシャルの「スポット・メソッド」を利用
  ・短いセグメントの組み合わせ
  ・教育と調査研究の専門家とTVプロデューサーの協力体制
  
【セサミストリートの影響】
  ・NHKでは心理学者・調査専門家・番組制作者による「2歳児テレビ番組研究会」が
   組織され、「パジャマでおじゃま」などの新しいセグメント企画が誕生。
  ・フジテレビでは、「ひらけ!ポンキッキ」がセサミストリートの直接的な影響のもとに
   作成される。
   
【セサミストリートの評価】
  (賛成)・「教育と娯楽をみごとに結びつけた」
  (批判)・「操作された刺激の洪水・・・」
       CM手法による刺激によって、ほんものの「知的認識」に到達できるのか?