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情報学特別講義I
情報学部では,「情報学特別講義」として,社会の第一線でご活躍の企業人の方々に非常勤講師をお願いしています。

2003年7月17日(木) スズキ教育ソフト株式会社 取締役社長 横幕睦
7月17日・24日は,子ども向けツールソフトの開発で国内の小中学校の情報教育をリードする会社から,横幕睦社長にご講義をいただきました。


藤井
今日は情報学特別講義Iの最後のトピックスです。
スズキ教育ソフト株式会社取締役社長の横幕社長にお越しいただいております。今日は社長さん自ら「学校教育の情報化と企業化」についてお話していただきます。よろしくお願いいたします。

横幕
みなさん,こんにちは。今,ご紹介いただきましたスズキ教育ソフトの横幕と申します。縁があって浜松でこういうソフト会社を興しました。今日は情報化の教育現場での流れと,それにのった我が社の考えと商品を通じて,みなさんと情報共有ができたらと思っております。
2回にわたりましてお話を進めてまいりますので,ざっとその概略を先にお話しさせていただきます。

初めに自己紹介を兼ねまして,会社のほうを少し紹介させていただきます。そして,情報化の中で新しい企業を興し,商品提供をしていくなか,そう言った物作りを通しして学校の情報化の歩みだとか,行政の現場の考えとか,話していきたいと思います。そして次回ですが,行政の予算のあり方,商品を作ってからの我が社のアプローチの仕方だとか,商品だけではなくいろんなサービス,産学官の一体になった仕事,そう言った面をお話しさせていただいて,最後に私自身も含めた私への人生訓というか,会社の経営理念というものを社会へ出られるみなさまの一つでも参考にしていただければと思います。こういった感じで今週,来週と進めさせていただきます。

今日は一緒にオペレートしてくれる社員が来ています。営業課で私の下で仕事をしている山本です。そして,2年目の社員で私の話をほとんど聞いたことがない社員が代表で2名来ています。ご同席をお願いいたします。

これが本社の外観です。ここに約60名の社員が開発から営業,総務・事務などの管理系からサポートセンターなどの役割の者がつとめています。社員は約100名です。営業所が東京と大阪と九州,本社も営業所としてあります。東京営業所は神奈川から北海道。本社営業所は静岡県から愛知・岐阜・三重・福井・長野・石川の中部まで。滋賀・奈良・和歌山から四国4県,山口までが大阪営業所。九州営業所は九州と沖縄の管轄。

当初,59年と書いてありますが,研究期間が2年ありまして,57年にこういった分野のソフトウェアの開発研究に入っております。いずれにせよ,新しい分野としてスタートきてしているので,考え方,それを元に出来てきた商品と提案。学校の情報化も新しい分野です。なかなか前例がない。そこにいかに提案していくかが必要になってきます。そういった中で,様々な喜びもあり,苦労もありながら行政や先生方と一緒になりながら20年間きています。詳しくはHP。そうですね,事前にアクセスしていただいた方は…?ありがとうございます。

教育ソフト業界でも算数数学用のドリルから,我が社のようツール系のソフトウェアまで様々でございます。我が社の特徴から説明していきたいと思います。会社の概要はお話しました。詳しくは社員の代表の言葉も載っておりますので,時間がありましたらHPにアクセスしていただければと思います。それからお手元にお配りした,会社経歴,沿革をご覧いただけるとありがたい。後,キューブランドという雑誌。年3〜4回の定期で,もう37号になっています。こういった冊子を提供していくにも一回あたり千数百万円かかる。無償で配っており,4万冊を全国の先生方にご提供させていただいている。そういったことも時間がありましたらお読みいただきたい。それでは,現在そういった中でどういう商品を提供しているか簡単にお話します。

20年近くたっておりますが,一番最初に,初期の頃に先生方が事務作業のマネジメントでお使いになる分野のソフトとして,保健の先生が,欠席・病気・身長などの情報処理でお使いになる保健管理のソフトウェア。あるいは中学から高校の進学で使う成績処理。スポーツテストなど。そういった先生方のマネジメントをお手伝いするソフトウェアを開発して提供しております。これが会社のスタートになっているんですが,小学校低学年,幼稚園あたりのキャラクタと音楽と文字と一緒に遊びながら知育をたくわえていくエデュテイメント。こういった分野のソフトウェアも提供させていただいています。理科の時間だけでなく,新しい時間枠としてできた総合的な学習の時間でも使えます。環境の測定ということで,温度や気圧やpHを測定できて,しかも最近では外へ持って出て,ノートPCがなくても外で測って,中でまとめることができるセンサーの機材も提供しております。そして,最近はネットワーク.先生方の一人一台の(PC)環境になってきた。会社ですと,50人以上であればひとり1台のPCで,グループウェアを導入している。学校もそういう時期になってきた。いわゆるネットワーク用のグループウェア。あるいは生徒児童達にネットワークを使って図書の検索をするというような,Cuteシリーズというソフトウェアの提供もスタートしております。以上のような商品を提供させていただいています。

そして,我が社の基幹でございます,ハイパーキューブというのがベースになっている。中学校において,PCや,情報教育はいろいろされてくる中で提供されてきた商品。ハイパーキューブという名前を聞いたり,使ったことがある方いらっしゃいますか?少しありますね。いわゆる,初めて義務教育にコンピュータが位置づけされて,情報教育の指針が作られた中で生まれてきたソフト。このソフトを中心にして,考え方などを情報化の流れといっしょに話していきたい。新しい会社で新しい商品を生み出していく。

私も自己資本でこのビジネスをしたわけではございません。学校出て,ある会社に就職して,その後にこの業界に入った。浜松は音楽の都。ヤマハやカワイ。その中に鈴木楽器製作所という教育楽器会社がありました。当時はプレハブで,2人目の営業マンとして入った。鍵盤ハーモニカといったものを作った数年後に入ってきました。当時は学習指導要領にものっていなくて,教科書にもない。黎明期です。今では世界でも使われている。つい先月にベトナムで初めて学校に2本で8万本くらい,今週末からむこうに行ってお手伝いすることになっている。これを製造販売ということで入社以来12年間やって,学校現場はめぐっていた。先生方のご苦労を知る素地はありました。

ある日突然ここにありますが,富士通のワープロ専用機,昭和57年に急遽出張中から呼び戻されて「もう今の仕事は今日でいい」と。12年間トップセールスだったですがね。名古屋に営業所の鉄筋のビルを建った矢先なのに…という思いもありました。「明日からこの研修に行け」と「研修料はもう払ってあるから」「オアシスの中級者研修に行け」と。これをきっかけに,嫌ならやめるしかないよな,と。40代,50代の人が新しいことをさがす中で,私はこれを売れ(オアシス)と言われてきた。私は会社に居てトップセールスをしてきた思いがあるので,なんとかしてやろうと始めてみた。ワープロ専用機は普及用で75万です。100Gというのは業務用。議会用が1000万円していました。一番大変だったのは価格が変わるので,75万が一年すると40万円。300万円だったのが1年しないうちに200万円になる。ですから,今までおつきあいがある幼稚園とか学校に,2ヶ月後に行くと半値くらいになっている。そういうニュースも遅いので,在庫をたたき売らないといけない。仕入れ値より安い。ですから,私はメーカーになりたいと思った。情報を早く手に入れる。メーカーならお客様に迷惑をかけずにすむ。自分でなんとかしようと。当時のワープロは絵を入れるときは,スペースをあけて切り絵して,コピーしてというもの。そういう雛形も作って売っていた。学校現場をまわっておりましたので,なんとか子ども達というときに,ワープロ専用機から,その横の業界ではパーソナルコンピュータがチラホラと見えていた。それは専用機と違って汎用性がある。コンピュータ制御があって,グラフィック制御もできる。思いをいれたらそれをちゃんと実現してくれる。そこで,幼稚園,小学校,中学校を主体的にまわっておりましたので,その分野における教育ソフトを作ろうと単純に思っただけです。それがきっかけです。

ですから,そのためにはどうやって作るか?とても知識はありません。営業一本で十何年やってましたから。にわか勉強で図書館行って学術誌だとか,学習指導要領だとか,そういう勉強もしました。本屋行ってピアジェの教育理論や児童心理学を読みました。急に勉強しようといっても難しいですよね。なかなかできないので,そういうものを見ながら「何年生ならいくつの数まで扱うのかな」「3桁の計算は何年生から」と研究しながら始めていった。当時はこんな感じで媒体はテープレコーダー。ひとつのプログラムが4分間で読み込める(テープで)。言語はBASICです。独学でした。そういったところから,一番重要なのは,「何をしたいか」「何を描きたいか」と。そのためにどんな言語を使うか。要するに物語とかいろいろ描けないとだめ。幼児教育用のソフトのシナリオ制作から入った。当時はXYのドットをひろう。間違えたら次のヒントはとか。キャラクターはどう変わるのか。そういったシナリオを考えて,ステップにしていった。そういったストーリー作成をしていった。幼児教育から小学校3年生までのエデュテイメントソフトを作って,ひとり新入社員をむかえて二人で作っていった。

こんなような感じ。カエルが出てきて,3回くらい間違えると「ゼッケン」に何匹までの数字が出てきて。隣は,最初は色が同じものを聞く,次に形が同じもの,青や丸はいくつと。もうひとつは,画面だけじゃなくて,スキルをつけるためにワークブックを添付した。画面と同じだけのバナナやカエルを置いて出来るようにした。これが58年か59年ぐらい。当時,数千本売れました。日本ソフトバンク。孫さんが学生さんにお願いして,九段の会社で冊子の発刊をしていた頃。世界のソフトバンクではない頃。そこで,ちょっと雨の降る日に機材をつんで,地図みながら九段まで行って,忙しく働いているところに「30分だけみてください」といって,「いけるじゃないか」と。数千本売りました。デバッグも大変でした。そういったことが会社設立の前にあったわけです。鈴木楽器の所属の頃にね。それを見て「会社を作ろうじゃないか」ということで会社を設立した。

横幕
実際に59年に会社を作りまして,初代の社長は鈴木の営業から来て10名くらいでスタートしていた。いろんな事業をして赤字に陥って60年に一度解散しようということで,みんな総務行ったり,販売に行ったりして,私ひとりが「最後に営業でもやるか」といわれて,61年から再スタートした。経営的にはこれからというところ。

求められる商品は何か洗い直そうということで,いわゆる思いつきだけではダメなんです。こういった情報教育がどうなっているのか,これから先どうなっていくのか。資本金もいつまでもあるわけではないから,これからどうするか。業界の分析が必要になって再スタートした。親会社にお願いして事務所をかりて,机もタダでかりて,PCを載せる台も必要だということで楽器工場で机を作ってもらった。

当時の学校環境は,まだ学校にコンピュータがやってきた,というところ。まだ数台です。学校規模によりますが,2・3台。ワープロとしても使えるとか,表計算が成績処理に使えるとか,せいぜいドリルでした。そういった中で初めて情報教育の正式な指針が平成元年に告知されました。そこで初めて中学校の技術家庭科の中に情報基礎というのが位置づけられて,使っていくようにという学習指導要領の告知がされた。そこで求められる商品は,ということで,中学校の技術家庭でどう使っていくか。これがその学習指導要領です。左側の方に大枠が書いてある。コンピュータの基礎的なところからモラルまで。私たちは日本語ワープロ,表計算,データベース,図形処理のあたりをどうにかできないかなと。BASICやLOGOを使って商品化されるメーカーもありました。なぜか?ドリルを作って売っても教科書も違うし,先生方のテクニックも違う。こういったツールであれば,どこかの会社のものは必ず買うだろうと。マーケットの大きさに着眼をしたわけです。

だったらもう少し,ということで,学校現場では先生自身がコンピュータの初心者ばかりだった。さわったことがない人が,さわったことがない人に教えていく。年間35時間の中で発達の歴史も教える,コンピュータの特徴も教えるということで時間が非常に短い。いろんな問題点を調査すると,いろいろと浮かんでくる。たとえば,市販品の問題は,大きなソフトウェア。表計算ソフトウェアなんか1万行×1000列あるんです。Excelと一緒です。中学生の初期の頃なんて1万行なんて必要ない。しかも当時の表計算ソフトは高価だった。それで,いわゆる中学生対象のコンセプトとして,Computing Utility for Basic Educationという,中学校の基礎基本のためのツールということで,これがハイパーキューブの商品名の由来です。皆さんWindowsをお使いになっていると思う。今はマルチウィンドウでいろんなソフトが同時に起動する。当時はMS-DOSというOSです。そういう時期で,画面は真っ暗で,そこにコマンドをうつとプログラムが動く。そういった時代でした。それしかなかった。そのころに今からお見せする特徴を持ったソフトを擬似的に表現します。当時の平成元年の頃の画面。こういう画面しかないわけです。

(ハイパーキューブのエミュレートによるデモンストレーション)

横幕
擬似的に表現しています。当時はプルダウンメニューなんてありません。しかしキューブにはこれを搭載しました。図形処理を起動するとこんな感じ。今は当たり前。なんとも思わないですがね。たとえば,これでワープロにペタっと図を貼れます。これが当時はワープロでも簡単ではなかった。表計算なら,表計算ソフトを起動してから2分待って…という作業が必要だった。そういう時代にこういったものを作ってきたということです。いわゆるファンクションも1〜5までは取り出し,しまったり,印刷するキーの命令は何のソフトでも1回覚えればいいと。ビジネスはA社とB社で全然操作がちがった。それを2,3時間の授業時間内で覚えればいい。ファンクションの6〜10についてはDBしかないこと,表計算しかないことといったように配置されていた。当時,練りに練って考えて実現できないかと考えてやったのがコレ。初心者には大きなソフトはいらないわけですね。関数も,SUMとかAVERAGEではなくて,日本語関数。これが初めて。SUMとか話し出したら授業時間がなくなる。SHIFTキーを押すと隠しコマンドで,普通のソフト(当時のビジネスソフト)と同じようなコマンドが出てくる。

そういったことで,まだたくさんの隠し機能もあるんです。Windowsでも統合できるようになったのは最近。それを平成元年に発売しているわけです。今のWindowsと同じ見た目と,操作。そして1枚のFDに入れてある。再起動の必要がない。当時の主力ビジネスソフトとデータの互換性をもたせて,当社のソフト同士でデータの互換性を保っていた。当時は中学校に20台ずつそろえるときに,ワープロやりなさい,表計算やりなさいと。4大ソフトでも40万円はしていた。うちは4つそろって\29,800だった。価格破壊です。

当然商品が全国にお使いいただけるようになってきた。平成4年あたりが第一次整備。中学校に22台ずつ。第二次整備。平成6年から11年度までに中学校を42台,つまり1人1台にしなさいよ,と。小学校は22台で,2人で1つずつになった。当社も伸びていかないといけませんので,こういったことを分析して,当然バージョンアップしてハイパーキューブ2として,実際に使って頂いた声を聞きながら,バージョンアップをしてきた。そして,さらにもっと使っていただこうと。小学校は3台でほとんど使っていませんでした。お絵かきをしたりと。小学校も市場が出てくる。小学校用のを作ろうということで,メニューのひらがなから,学年別の辞書。いわゆる大文字,小文字を漢字にするわけではない。用語を見直して,漢字をひらがなになおしただけのインタフェースではない。

これも日本で初めて。学年別辞書。学校で使う日本語変換ソフトは,学年別に漢字を使う割合は違う。低学年では読めるように,高学年ではきちんと漢字になるように。シェアというのは,最近はいろんな会社のソフトを使っているので,私どものソフトが入っている学校の割合。もちろん,うちのソフトだけという意味ではない。我が社のソフトは60%くらいの学校にご採用いただいている。

今は学校用コンピュータの整備をして,年代にあったツール作りをしてきました。それだけではダメなんですね。やっぱり,いろんなサブテキストみたいなものがあったりする。情報教育の商品を提案していくけれど,そういった面でのパートナーとして取り組むという話をしていきたい。

全国展開でやっているものもありますし,産学協同でやっているプロジェクトもある。せっかく地元浜松ですので,たまたま静岡大学情報学部という土地柄から,行政現場と一企業がどうやっているのかの身近な例でお話します。

浜松セミナー。当然,会社でも出来ますし,教育センターでも出来る。研修施設があるので,足りなければ学校のノートPCを持ち込んでいただいて,事前に環境整備して統一のものをつくる。初心者コースをしたり,中級者コースをしたり,あるいは総合的な学習の時間でどう使うのか。他の教科でどう使うのか。多面的に研修会を定期的に開催をして,スタッフも特に初心者コースでは5人に1人の社員をつけて先生方のお手伝いをしている。総合的な学習の時間の考えとして,外に行って調べて,発信するというスパイラルの教育の中のワンシーンです。

それから情報アドバイザー。静岡大学情報学部では,小中学校へ皆さんお手伝いに行かれていますよね。情報アドバイス制度というのは数年前に私が教育長のところにおじゃまして,「どうも学校は業者や外部の人間だとかに対して敷居が高い。地元の浜松のお手伝いをしたいんです。」と,お話に行った。教育長に理解いただいて,当時の浜松のうち14校が研究校でしたので,そこにうちが8名の人員をわけた。それが浜松での情報アドバイザー制度の始まり。それが成功して,事業費が計上されて,100校に対して都合2500回。今はこれ4000回という事業になった。これが1業者の1人から始まる。市民企業として,税金を払っている一市民としてもっと情報を活用してもらいたい。

みんなに本当に気に入ってもらえるのは,有る程度評価してもらえるし,事業にもなる。私も商売ですから,1年目は事業でやりましたけど,今年はディスカントされて他社に取られてしまった。ですから,私は事業化しただけでとられてしまった。この中に静岡大学の学生さんもお手伝いをしていただいて,現場の先生や子ども達は大変喜んでおります。当然,その中に静岡大学も受験されていると思いますが,教育情報化コーディネーター資格を持って,いわゆる情報だけでなく,行政や教育にも詳しい知識をもった人で,幅の厚い人の育成がある。我が社は3級が25名,2級が2名。2級だと予算までタッチできるレベルの知識をもっている。浜松市で年間5億ずつ,3年で15億あったら,何をどこに分配するのかということを考えられる人がITCEの2級。我が社も教育産業ですから25名の合格者を出しているのはそういう経緯があります。

これもそうですね。教育長に「総論として浜松市の小中学校は遅れている」と「先生方のお考え任せではなく,少なくともスキルがどのくらいあったら情報活用能力,プレゼン能力があるわけで,おおまかな指標がない!」と。使わない人でも,一生懸命使っている人でも給料が同じだと。翌週から,教育長がセンターにもっていって「この指標でやってみろ」と話がいった。私のところには問い合わせがきましたが,今は級を作って指標が出来た。これは,去年の結果です。1学期には級外は1万人くらいいった。それが1970に減って,ほとんど出来るようになっている。やっぱり,今の情報化の中でキーボード入力の確実さとか,デジカメから取り込めるとか,いろんな経験を通して情報をさがす能力や,表現する能力がないとできない。会社だってそうですよ。プレゼンテーション能力がすべてですよ。表現能力。そういった力を学生時代から身につけているかどうか。こういった成果を,いろんなところで活用している。普段の授業の中でコンピュータを使う。美術や音楽や,いろんな教科で使う。日々の積み重ねがこういうことになるし,そのうち難易度も上がるかもしれない。ひとつの「指針」として,55万人都市の教育の指針として位置づけられるということです。2年目なんかは先生がやっています。先生方も同じようなことが言えるわけです。1分間に何文字キーボードで打てるか,ということが分かるわけです。

あとですね,都田ダッシュ村。3,4分くらいで終わると思うので実際のものをお見せしながらご紹介いただきます。

(都田ダッシュ村 http://project.suzukisoft.co.jp/dash/

山本
今,見ていただいているのが都田小学校から行ってすぐのところにある田んぼなんですね。これはですね,都田小学校の田んぼに2カ所小屋を設置してカメラを置いてあります。遠くから見た田んぼと,近くから見たたんぼというのがあります。小屋の中に,当社のキューブセンサーという商品がありまして,温度や湿度やpHが測定できるようになっています。小屋の中では気温が36度で,田んぼが31度というのが分かる。ノートでとったデータや,カメラの画像を当社のWebサーバーにあげてこのページを見て頂くと分かる。24時間測定していますので,最近の様子がすべてわかるようになっています。小学校の理科ですと,温度計や湿度計ではかるのが多い。計測機器を使うことで過去の様子が分かったり,田んぼの様子が昼間だけでなく,夜も分かるようになっています。このことによって,子ども達が歩いて田んぼまで行かなくても,教室の中から様子が分かるようになっています。当社としては,学校では毎日計測して管理というのがなかなか出来ない。企業としてこういったセンサーの活用事例や,データのWeb計測の技術研究を行っています。このように,様子がインターネットを使って見えるということは,社内からでもデータやカメラの様子がすぐに分かる。担当者が様子をみていて,止まったらすぐに行くようになっています。このページ「都田小学校」で検索するとすぐに見えるようになっています。

横幕
なかなかメンテナンスが大変で,学生の方にもお手伝いいただいています。都田は北の端で会社から1時間くらいかかります。電源がよく落ちたりするのは強風や天気の悪い日で,アクシデントはそれなりに大変です。商品を作るだけでなくWebの管理だとか含めて,ボランティアですね。そういうようなことで協力させていただいております。

私どもとしては,企業ですので情報ツールの提供。これは時代によっても変わります。時代に合ったスキルも違うし,それに対応したツールがある。これがベースです。たまたま浜松の例をあげましたが,全国にキューブの認定インストラクターが400名いらっしゃいまして,活用方法や,指導方法などの地元販売店との人的サポート支援というもの。それと,距離とか,時間とか,そういったお金がいらなくて,その分ダイレクトで入手できる情報の提供をインターネットで行っている。こういったものを三位一体の「ターンキーソリューション」といっている。やっぱり教育ですので通常のビジネスだけではなくて,奉仕のようなものがあるわけです。そういった尽くすという面と,そういったことによって認めていただくという信頼が成り立たないと教育ビジネスは成り立たないわけです。それを私は社会人になってから給料をいただいて,そういったことは重要だと常日頃から当社の社員には申しております。こういったことをもっと具体的に,次回は行政のアプローチ,予算のありかた,産官学のありかたを含めてお話したいと思います。

今日はこの辺で終了したいと思います。

■質疑応答

藤井
社長さんのアイデアで商品を開発し,学校と研究開発しながら非常に面白い話が聞けたと思います。それでは感想文を出して下さい。


藤井
私,2点ほど質問を。現在,おとなのアプリケーションではオフィスが独占してますよね。私共情報サービス業してもVBやExcelベースで組んでいる。今の子どもさんはオフィスを使うと思うんですが,キューブで勉強するとオフィスと連動するノウハウになっているのか。

横幕
基本的にはWindowsライクになっています。OSもかわっていきますね。だから,教育の現場はあんまり早く変えられない。あまり早くバージョンアップや内容を変えるのは合致しない。特に小学校ですと,1年生と6年生は知的能力が違う。ツールバーなんかも子ども用には大きくしたりする。表現的には幼児用,小学生用にしていますが,基本的にはWindowsライクになっています。そこら辺が非常に苦労するところですね。

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藤井
製品としてのアプリケーションソフトを自社でもってやるというのは大変だと思う。教育ソフトをずっとやってこられて,私見ていても子どもが挑戦して,発見していくような,「生きる力」といわれますが,社長さん自身の教育思想がこのアプリに生きてくるのかどうか。

横幕
ひとつはですね,最初にBASICで教材を作っていたときに小学校の算数やいろんな教材を作っていたときに,グラフィックで展開していくときに当時あればよかったのになぁ,という思いがある。情報活用能力とか,発信とか,資料のまとめというのは家庭で普及率が高いけれど,授業で行う場合有る程度制限のある中で,技術を学びながら到達目標の解決をしていく。それもあるので,限られた時間でよりしやすい。あるいはWizardのように,行き届きすぎてしまうと,考える力が養えなくなる。いわゆる,親切すぎないというものがあるわけです。親切すぎない配慮が考慮しているところです。

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藤井
都田ダッシュ村のことを知っている学生さんいまして,これ僕すごい面白いと思ったんですが,子ども達が実際に外に出ないでこれで間に合わせるということはなくて,逆に出るようになるのか?

横幕
どこからでも見られるというのはひとつのきっかけ。実際に行ってみて,虫を見つけて行ってみたりしてね。センサーってのが裏側に隠れてお手伝いする道具です。そこでちょっと「おかしいな,行ってみたいな」という体感も含めて,実際にはそっちのほうが重要ですからね。

藤井
あれに刺激をうけて,現物の田んぼに興味を持つようになるということですね。

横幕
農家の多い環境ながら,自分の家の田んぼは行ったことがないという子もいる中で,田んぼに興味をもつようになった子もいる。

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藤井
最初に,ワープロや表計算一体となったものが出ない頃に開発された。おとな向けソフトを作るほうに行かないで,教育用ソフトにいったのはなぜ。

横幕
社会人になってから楽器の営業から始めた。教育畑から始まった。そういうところで役に立つとか,そういったところをまわって知識で,教育のフィールドでやっていきたい。

藤井
感想もあります。中学生の頃にハイパーキューブを使わせていただきました,と。先生の熱意が伝わってきた。等の感想もあります。

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藤井
逆の疑問ということで,我々はPCを使って漢字が書けなくなる。弊害の側面は何か思い当たるものはあるのか。それにはどう対応するのか。

横幕
私も変換して,これが正しい字だと判断できても書けなくなる。本当に書く機会も少なくなりました。読み書きという基本的なものは低学年からやるべきだし,情報化といってもそこは大事です。繰り返しみたいなところも含めて,できれば算数や漢字の繰り返し学習のソフトも開発し,毎日使っていただくような環境づくりをお手伝いできればと。

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藤井
それから,最初の方に話された,4つのアプリケーションに合算した技術は画期的だったと思う。これだけのことが出来たのはなぜ可能だったのかと。開発とか。

横幕
なかなか難しいことで。経営者や校長先生への話をするなかでは技術論ではなく,どうして,なぜ,のところでは「飽くなき追求」なんですね。私は技術者じゃないので,本当にできない苦労は肌で感じない。何回も何回もあきらめずに「作ってくれないか」とか「どういう人を連れてきたらできるのか」という押したり引いたりする部分。なんとかやれば出来るとか。ねらったものに近いものが出来るんじゃないか,とか。エネルギーがすべて。どんなことがあっても,なんとでもやるぞと。その中に社員や技術者の中に,どうしたら解決できるのかという手伝いはしてきた。そういったことの繰り返しで,トライして,というのが8万語の教育用漢字の中で精査して,FDにおさめた。8万語も小学校ではいらないですよ。目的達成する決心。なかなか難しいものありますが,そういった気概が何よりも重要かなと思う。そういう気概があれば人もさがすし,ハードメーカーなどにもお願いするし,ということもできる。

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藤井
営業をされていたということですが,私も一時ソフト作った経験がありますが,自分ひとりでやってしまいたくなる。それに対して横幕社長の,学校の先生方と交流して,意見を聞いてコーディネートしていく印象を受けた。それは営業マンやっていたときのコツがあるんでしょうか。

横幕
今でも技術系の人は,話を聞かない,話をするのが嫌だという人が居る。人間性が必要。たとえば100人,500人の先生方に聞けばそれなりの意見が出てくる。そこで,まとめないといつまでたっても商品はできない。そうすると,何を言われたときに「これはやるぞ!」と思うのか。あるいはお断りする勇気も必要になってくる。マネジメント力が必要になってくる。そういうのが嫌だと閉じこもっちゃいますね。いろんな人と話すのが嫌だとか,断るのがめんどうだとかね。

藤井
今の点大事だと思います。自分だけでやってしまうというのは一昔前の技術者ですね。今はコミュニケーションして前に進めていく。

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このページは,2003年に静岡大学情報学部において行われた情報学特別講義Iの記録です。著作権は講師(発言者)に所属します。