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國香先生実践発表

國香真紀子(富山市立東部小学校・教諭)
人とかかわる体験的な活動の中で情報活用の実践力を育む支援と評価
「21世紀わたしたちの手で笑顔の輝くまちへ」の大単元の実践を通して

富山市立東部小学校の國香です。今日の私のお話なんですが,80時間の実践を通して,人と関わる体験的な教育の中で,情報教育の実践の模索。

21世紀私たちの手で笑顔が輝く街へ,ということです。体験的な活動の中で情報活用の実践力をつけていく授業です。資料の最初のページを見てもらえばだいたいの単元の流れが分かるかと思います。その次のページ6年生に9つのプロジェクトが与えられてこの実践が進みました。

この実践に取り組むにあたって悩みがいっぱいでした。たとえば課題意識をどうやって持たせたらいいのかな,9つのプロジェクトを二人のTTでやったんですが,二人でどうやって指導したらいいのかな,グループの中で動かない子供たちをどうしようか。自己評価をどうするか,などです。今日はその中で,「情報活用の実践力を育む評価の模索」ということをお話させていただきます。

まず,今回の実践で評価するにあたって,いろんな評価があるんですが,私の場合は「どうやって力をつけようか」という視点からの評価をしました。そのときに子供たちに自己評価するのをいやがらせてはいけないなということを念頭に置いて行いました。

実際の評価ですが,まず1つめに育てたい力を設定しました。育てたい力にあたっては,3段階に分けました。第1段階で,過去4年間の体験的な学習の中で育った力を洗い出し,学校として「育てたい力」を設定しました。その中で情報活用の実践力の視点を埋め込みました。その軸を元に,私のクラスのこの単元で育てたい力を設定しました。学校として育てたい力に,6年生として育てたい力を設定しなきゃいけないということで,6年生の発達段階,子供の実態を考えて,この目標を設定しました。次に,単元で育てたい力を考えたんですが,子供たちの状況が変わって単元構想も変わっていきました。そこで活動場面ごとにつけさせたい力を設定しました。

なんで「育てたい力」を何回も設定するの?ということですが,これは教科の目標設定と一緒なんじゃないかなと思いました。たとえば算数も単元の目標でかけ算九九がありますが,小単元では5の段の勉強がある。私はそれと同じことをしたと思います。活動場面でつけたい力をどう子供につけていくか。子供と教師が活動場面でつけたい力を共有すればらいいんじゃないか,と。そうすれば情報活用の実践力が向上するんじゃないかと思いました。

それで,つけたい力を子供にどうやって意識づけさせるかということで,ひとつめの手だてとして自己評価カードをつけさせました。カードの工夫ですが,ひとつめは活動の最初に見通しして,活動の最初に見通しを持ち,なりたい自分をイメージする項目をつけました。これは資料1にあります。「自分を見つめてみよう」ということで,活動の最初にこれを書かせました。その次に,資料2をごらんください。まず「短時間」で記入しなければ子供はすごく自己評価をすることが嫌になると思ったので,そこで精選して一日に「これだけつけさせる」と設定しました。資料3をみてください。今日の目当てに対して自己評価を1から5の数字でつけさせて,自分はなぜその数字をつけさせたのかをつけさせました。ただつけさせるのでは自己評価にならないので,自己評価カードへの支援を行いました。資料1.5に子供が書いた評価カードをのせました。

そこで,子供は「しっかりやる」とか学習態度を書きました。その日のやることを書く子供がほとんどでした。それでは意識させたことにならないので「交流するのはなんで?」とか子供と対話することで,なんのためにその活動をするのかを認識させました。そういう活動をすすめるとその次には自分の考えを深めるとか,わかりやすく伝えるとか,気持ちを伝えるとかいう目標にかわっていきました。でも実際に,わかりやすいといっても,子供は「どうすればわかりやすいか」「どうすれば伝わるか」は分からず,具体化できません。授業の終わりに自分の目標を発表させました。まず,相手意識をもてるようになってきました。そしてわかりやすく伝えることが,資料や自分の考えを入れるといった実際の活動を入れるといった,つけたい力を意識した活動にうつっていきました。そして自己評価の重要性を自分でわかってきました。

自己評価カードの有用性ですが「付けたい力を自分で認識する」「めあてを達成しようとする営みが,情報の実践力の向上を促進する」「時系列に記録が残るので自分の歩みを再確認できる」ということでした。これは,途中ですが,自己評価を行ってきた,子供にどうだったか聞いてみました。「たくさん自分の活動について書けるようになってきた」というのがありました。最初は「ふざけない」程度だったのが,具体化してきたので,だんだんたくさん書けるようになってきました。

教師にとってその自己評価はどのように働いたかということですが,具体的につけたい力が,だんだん子供と対話をするうちに自分自身が「この子に足りない力は何か」ということが分かってきました。また,その子の変化を時系列でとらえられるようになってきました。たとえば,自己評価が低い子は活動の見通しができていないのではないか,ということで個別に支援しました。

実際に,付いた力を見取る,ということですが,資料4です。プロジェクトごとにこのように「支援」と「付けさせたい力」の評価をどうやってきたかを,誰が見ても分かるように努力しました。こうやって見取ってきたものをチェックリストで,一体現在子供にどんな力がついているかを確認しました。それが資料5です。これが単元開始20時間。付いていない力がとても明確に分かります。たとえば,メディアを利用して意見交換を行い自分の追求に生かす,というのがチェックされていない子は意見交換をしていないのが分かります。そこで,ついていない力をつけるような体験をさせるために教師が動いていく,と。その結果資料5では,40時間たったところですが,いかにもやったな,と。活動が充実していることが分かります。そのときに体験を取り入れているんですが,ちゃんと子供の意識にそったものか,与えられた活動だと感じると意欲が下がるので,「自分たちがやった」と感じるようにしました。

まとめにいきます。情報活用の実践力をはぐくむために,教師は子供の力をより具体的にきめ細やかに把握する。そして,子供は目指す自分の姿を明確に描く。たとえば先ほどお話したように,具体的には自分の成長が見える評価カードの利用・付いた力を確かめ合う場。それによって子供は自己評価する必然性が出てきました。「必ず発表しなきゃいけないから練習する」のように,意欲的な活動になってきました。それが情報活用の実践力の向上を促進できたのではないかと思います。


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