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パラグラフライティング

まずパラグラフとは何か。パラグラフと言うのは,ひとつのテーマ,トピック,話題について記述したものです。段落と同じと考えてもらって結構です。複数のパラグラフを組み立てて,1つの「文章」になります。

さっきの文章,マウスがクリックがどうとか,と言うのがありましたが,あれもひとつのパラグラフです。パラグラフは主題文と支持文から成ります。主題文は書き手が一番伝えたい意見や考えを最初に記述するものです。支持文は主題文で表明した意見や考えを詳しく説明するもので,理由や具体例などを挙げて,主題文で書いたことが正しいことを証明するものです。支持文は,主題文に関連したものでなければなりません。

次の例では,「ほどんどのパソコン用語は,動作や形状を英語で表したものです」というのが主題文です。それを具体的に示すもの,具体例ですが,2,3,4番の文章が支持文になります。

これがパラグラフの基本形です,主題文と支持文からできてます。

パラグラフライティングには,パターンがいくつか合って,今挙げた具体例とか,分類列挙とか,比較,意見と理由指示・手順因果関係時間的順序空間的配列など,そういうものがあります。パソコンなどの操作の説明では,具体例や指示・手順を非常に多く使います。意見と理由は操作ではあまり使いません。ビジネス文書でも,因果関係とか時間的順序,空間的配列なんかは使いませんから,意見と理由くらいまで使えると,大体大丈夫です。

まずは分類・列挙のパターンを説明します。まず悪い文章を提示し,よい例を提示します。

次の文章はワードの字下げについて説明する例です。字下げは分かりますか?インデントという言い方もします。その説明をします。

「(1)字下げをするには,[書式]メニューの[段落]を選択し,数値を入力して行の左端と右端の位置を指定します。(2)また,ツールバーの[インデント]ボタンをクリックしてもインデントを設定できます。(3)[インデント]ボタンをクリックするたびに,行の左端が1文字ずつ右方向に移動します。(4)さらに,ルーラーのマーカーをマウスでドラッグしても,行の左端と右端の位置を移動できます。」

この文章の悪いところは,最後まで読まないと読まないと,字下げの方法が3通りあることが分からないところです。「また」とか「さらに」とか言われて,読み手は,まだあるの?まだあるの?という気持ちにになります。これはライターが知っていることをそのまま出しただけの文章。知っていることをズラズラ並べているだけで,まったく整理されていません。

これを図解して整理します。

一つ目の方法,二つ目の方法,三つ目の方法をそれぞれ整理しています。

これを文章にします

まず最初に,「字下げには3通りの方法があります」と言う風になります。そういう風に言われたら,読み手は心の準備ができます。読み手は,なるほど3通りあるのか,と言う風に準備ができます。そこから,「1つ目は」と言う風に始まります。「2つ目は」と言うと,ここまでは1つ目だと分かる。「3つ目は」と言われて,3つ目だな,と言う風にわかります。これが整理された情報です。情報を図に整理しましたが,これが読み手に分かるように展開してあげる,これが読みやすい文章です。だーって水を流すように文章を出すと,読み終わった後,読み手がもう1回読み直して,自分で整理しないといけない,最初から整理された文章がわかりやすい文章です。

今はインデントの方法を説明しましたが。分類・列挙の記述パターンは,特徴や,機能,方法,問題点,理由,原因など,並列したものを説明するときに利用できます。1つ目はこう,2つ目はこう,という文章になります。また,第一はこう,第二はこう,とかいう文章も考えられます。

簡単でしょ?このとおりに書けばいいんだから。じゃあやってみましょう。

この問題は,大学の講義のテスト問題です。

A地点からS駅に行く方法について記述してみてください。
時間は10分。

できました?出来た人に聞いてみましょう。

−1人目の意見
2つあるんですけど・・・

なるほど,1つ目の例では,最初に特徴をおっしゃったわけですね?時間がかかるけど料金がやすいという風に,2つ目の例は,先に方法を言って,次に特徴をおっしゃった例ですね。

−2人目

ありがとうございました。ふたつ述べていただきましたね。

−3人目

他はどなたかいませんか?

−4人目

最初に,時間とかかる金額をおっしゃったんですね。

−5人目

今の人は,二通りあると言った後に,路線名をおっしゃった。その後,ここからここまでどのくらいということを説明しました。

これだけのことなのに,色々ありますね,面白いでしょ?実際に私の講義でテストをやったときの学生の回答例を示します。

解答例1

これとね,次の例ですが

解答例2

比べてどうですか?解答例1と解答例2を比べてください。どっちが分かりやすいですか?
そう,解答例2のほうがわかりやすいですよね。解答例2では,ラベリングと言う手法を使っています。

D駅から行く方法,2つ目はY駅から行く方法です,というように,「1つ目は」と言った後に,その方法を短い言葉で示します。これがラベリング。

残念なことに解答例2では,全体の所要時間を言っていない。パーツパーツで何分かかるかと言うことはそれほど重要ではありません。合計で何分かかるのか,所要時間がどれくらいなのか,ということのほうが重要です。

解答例3では,最後に選択のアドバイスも書いてくれました。

この問題では,「行き方を説明しなさい」というものですが,どう行ったらいいですか?と聞かれた時には,特徴を先に言うのもいいですね。相手が何を欲しているかを考えて,欲しい情報を先に言ってもらうのもいいです。

解答例4では,最初の段落で経路を説明し、次の段落で2つの方法の相違点を説明しています。「2つの方法はS駅までの時間と料金が異なります。」と書くことにより、相違点が明確になっています。

以上が分類列挙でした,次に比較をやってみましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

次は,ノートパソコンの比較です。

・・・悪い例

これは何がいけないかと言うと,比較内容が対応していません。N01は,小さくて軽いといったのに,N02はどうなのかわからない。この文章だと,両機種の違いはフロッピーディスク装置のあるなしだと思われてしまう。また,最後におすすめですとか書いてあるんだけど,純粋に比較するだけならこれは要らない文章です。

これを図にして見ました。

さっきは「小さくて軽い」と言ったけど,もっと詳しく書いてみました。用途も書きました。

これを文章にします。比較のパターンとしては,まず,何を比較するのかと言うことを示します。

・・・修正例

これが基本的なパターンです。

比較のパターンとしては,2つ以上の事柄を比較し,違いを明確にしたい場合に利用します。これから何を比較するのかは,主題文に記述されます。また,比較内容を対応させないといけません。

今は文章で書きましたが,ビジネス文書にする場合,文書で書くのではなくて,箇条書きにするパターンもあります。

ただ,これだと文書が長かったり短かったりで見栄えが悪いので,これを見やすくしたのがこれです。見出しを立ててあげて,字をそろえてみました。この方が見た目にも分かりやすいです。

これをさらに一覧性を高めるようとすると表になります。

例えば上司に,N01とN02のどっちかを会社で購入しようと思うけど,違いがよく分からないといわれたときに,この表を持って行って,大きさはこうです,重さはこうです,用途はこうです,って報告すればいいんです。

次に意見を求められたときの答え方です。

・・・意見と理由の悪い例

この文だと,デスクトップ型パソコンがいいと言っているように読み取れますが,明確には述べてない。まず,どっちがいいかと言うことを明確に述べないといけない。

・・・図と修正例

まず意見を述べています。それから理由を述べています。この場合理由が2つあるので,分類列挙の方法をつかって,ラベリングもして詳しく述べています。最後にもう一押し,以上の理由によりこっちをお勧めします,という言い方。これが意見と理由のパターンです。

練習問題として,将来どのような職業につきたいか,ということを書いてもらって,その理由はこうですと述べてもらいます。

堀田
将来がない人(記録者注:すでに職についている人)はどうしたらいいですか?」

そうですね。就職の時に書いた履歴書の志望動機の欄を思い出して書いてください。

就職面接で,志望動機を聞かれたときにどう答えるか,そういうことを考えて書いてください。

最初から文章で書くんじゃなくて,図にして書いてみるとわかります。理由だと思っていたことが理由じゃないということがあります。野球とサッカーどっちが好きですか?と言うときに,「野球が好きです,理由は小学校のころから続けてきたからです」ということを書く人がいますが,それは理由じゃないんですね。小学校から続けてきたなら,それに見合う魅力があるはずで,それを説明しなきゃならない。

うちの学生が書いたものをお見せします。

悪い例です。

意見と理由の場合,問題になるのは書き方じゃなくて,「理由」に説得力があるかどうかです。その意見が確かにそうだという説得力がないとダメ。この人の場合,説得力が無い。好きだというのは理由にならない。話が飛んでいます。

書き直してみました。

書き方としては,最初に意見を言います。その次に理由を,一文で言い切っている。そのあとで具体的に述べて,最後にもう一回意見を言います。

理由が体験に基づいていると説得力がありますね。


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