設計者と利用者の溝
高橋
使いやすいシステムを作るときに必ず言われるのは,設計者は利用者の思考の流れをあわせて設計する必要があるといわれている。こういうのはたくさん聞いたことあると思います。ノーマンって人は3つの概念モデルという形を書いています。これは,「こうしろ」というモデルの図ではなくて「こうありがちだ」というモデルです。ユーザーが居て,デザイナーが居ると。デザイナーは今までの知識や経験を元にドキュメントやシステムに実装すると。実際にユーザーに提示するエラーや操作手順を考える。ユーザーは完成されたものに対して使ってみると。で,このイメージがずれていると間違いが起きる。本当はユーザーとデザイナーのやりとりがあるとうまくいくんだよね。ユーザーはデザイナーなんて意識しないんだよね。こういったところで分かりやすいとかわかりにくい問題がある。1986年頃にノーマンが提唱しています。実際には,デザイナーとユーザーがお互い連絡とりあって設計者がユーザーのメンタルモデルを意識して作れと言われている。大変なことです。ユーザーはたくさん居るし,全員観察は出来ないし,思考しろといわれても難しい。そういうときにチェックすべき項目が示されている場合があります。
高橋
ユーザビリティとかUDという言葉聞いたことあると思います。使いやすいインタフェイスのために何を考慮すればいいのか。利用者のことを考えるというけど漠然としている。ここに示した5つの例を示した。それ以前に,安全性や強度など,必要な要求事項を満たすとある。たとえば,かっこいい傘立てだけど10本入れたら曲がってしまった,というのでは傘立ての意味がない。
使いやすいインタフェイスは何が考慮されているか
高橋
1.身体。身体と機械の位置。車いす対策で券売機の例がありました。背の低い人,高い人,いろんな人居ますからそれについて気をつける。操作方向や操作力。たとえば冷蔵庫を開けるのに精一杯だったら大変ですね。
高橋
2.情報。コンピュータのインタフェイスを研究するとここだけになることが多いです。メンタルモデル。あと,用語と一貫性。「切符を買う」「切符の販売」「切符の購入」とひとつの機械で一貫性がなかったら分からなくなる。フィードバックね。お金を入れたら金額が表示されない券売機じゃ困ると。コンピュータのソフトを作るならここがメインのチェック項目だろうね。
高橋
3.時間。意外と重要。長く使う装置なら当然疲労を起こす。ひとつは疲労しにくいデザイン。あるいは,適切に休憩の時間を取らないといけない,とする。券売機の例だと入力と出力の反応時間。480円を押して2秒たって切符が出たら我慢できないだろうし。
堀田
今の2秒待てないのはせちがらい世の中だからそうなの?人間は反応がないと不安なほうが多いの?
高橋
僕のイメージでは反応がないのが不安だからだと思う。時間がかかってもいいけど,「発券中」とかとりあえず反応する。
堀田
ダウンロードも進捗が出ないとしんどいもんね。
高橋
時間を短くすればいいってことじゃなくて,時間が長くなるならフォローするということです。
高橋
4.環境。環境っていうのは,利用する場所があらかじめ想定されるので反射のない照明,温度・湿度,騒音や振動,空間デザインとかね。券売機って室内機に置かれているから,室内の明るさで見えるように設計される。
高橋
5.運用。大規模システムになると重要です。さきほどの券売機の例でいうと,値段がかわって値上がりが起きたと。すぐに対応できるかというメンテナンスの問題。人間関係と書いたけど,使う順番が決まっているのに表示されない,駅員に聞いても分からない,というのではインタフェイスとしては不十分です。最後使うのは人間ですから,きちんと連絡して運用しないといけない。
こたつに入ってテレビを見たい
高橋
で,実際には券売機みたいな例をあげましたが,タスク分析という方法を使います。
高橋
電気ポット。食卓で使うときに5つのチェックを使うにはどうするか。左側にタスクというのを書き出します。食卓で使うなら電源プラグを入れる。入れたらランプがつく。沸騰が終わったら「沸騰終わりました」と出る。と,やっていく作業が書かれていく。作業を書き出して「食卓で使う」というシーンで考える。実際は,食卓にもってくるシーンがあるかもしれない。そうしてさっきの5つを問題点として見ながらチェックしていく。見やすさとしてはランプの輝度が低いという問題が起きているかもしれない。理解としては沸騰の意味が分からないかもしれない。身体は意外と重要で電源プラグを入れてひっかかったときにうまく抜けるか。ポットは簡単に抜けますね。あれは抜けて転ばないからけががないんですね。
高橋
次に解決策を考える。現実的な解決策と近未来での解決策とあえて分けている。夢物語と現実にできそうな話を列挙していく。つまずくんならコードレスにしたらどうか,とかね。こういう風にチェックリストのような感じでシーンに応じて作業手順を書いていって埋めていって解決策を考えることを繰り返していく。これが食卓の場合もあれば病院の場合もある。情報学部の人はコンピュータのソフトウェアを作るのが多いと思いますが,電気ポットみたいなものをプロダクトデザインと呼ぶことがある。コンピュータのソフトウェアは後から変えられるからいい,とありましたがプロダクトは一度出荷したら1年とか,最近は2,3ヶ月ですが後には引けない。製品を作る使いやすさとソフトでは責任の重みが全然違います。実際に設計の担当者に聞くと,ソフト屋さんみたいに出荷して後から直せばいいんだ,というのではないと。うちは出荷したら10年耐えられるようにするんだ,と。あまり冒険しないで確実に解決していくんだ,とある。
高橋
皆さんに課題でやってもらいたいんですが,小さな例ですが,テレビのリモコンで。シーンとしては「こたつに入ってテレビを見る場合」と。まず,タスクを書き出して,問題点を抽出して,解決策を検討すると。解決策は現実と近未来ってあったけど,1つにまとめて書くWSを渡します。この辺の5つのことをチェックしながら考えていくといいと。周りと相談するといいので2人のペアでやってほしい。まず,タスクを出だし考えていきたいです。
高橋
こういう風に表を配りますのでやってもらいたいと思います。こたつに居るユーザーがリモコン使ってテレビ見ると。ひとつ,タスクとしてはリモコンを探すというのがあります。そのときの問題点と解決策。まずはタスクを考えていきましょう。その後,それぞれのチームで埋めていってほしいと思います。
学生
リモコンを探す
リモコンをテレビに向ける
リモコンを握る
リモコンで電源ボタンを探す
リモコンのボタンを押す
音量を調節する
高橋
それでは,2,3チーム発表してもらいたい。こういうタスクのときに,こういう問題があると思うので,こういう解決策を考えた,と言って下さい。
学生
リモコンを握るときに,問題点として握りずらいというのがあるので,握りやすい形にする。そうするとテレビにリモコン向けるのも自然になる。
学生
リモコンを探すときに,見つからない問題があるので,色をつけてカラフルにして見つけやすくする。
高橋
カラフルなリモコンにすると。これはこたつのふとんにからまってるときは難しいかもしれませんが。
学生
電源ボタンを探すときに,電源ボタンがどれかわかりにくい。電源ボタンだけ特徴のある色にする。
高橋
なるほど。
高橋
みなさんありがとうございました。実は製品作る方でもこういう研修をするそうです。すると実際にはそううまくできないそうです。ユーザーの立場にたって仕事を分析して問題点を抽出するというのがかなり重要になってきています。今,少し見ると,リモコンで有名なのはナショナルのリモコン。「使いやすさ」って書いてあるんだよね。電源のボタンの色を変えるというのもやっています。握りやすいようにと,握り手は細めにしてあります。リモコンが大変っていうのは地上波デジタルとか,BSとかたくさんの放送に対応しないといけないと。だから,リモコンの工夫をしないといけない。BSデジタルって僕たくさん見ますが,形はボタンがついていてとあるけど,パナソニックのこのリモコンが非常に使いやすいと思っています。
高橋
さきほどのものを教科書では,こんな風に書かれています。リモコンを探す,リモコンを持つ,電源ボタンを押すというのがあります。問題点としてやはりいくつか出ています。さきほどカラフルにするとありましたが,手をたたいたらリモコンから音が出るとかね。それだったら音声認識だよね。音声認識なら「1チャンネル」と言ったらチャンネル変えてくれるとかね。カードの切り込みの話もそうだけど,そもそもどっちから入れてもいいようにしたらカードの形変える必要もないという話もある。
高橋
リモコンの形については,大きさを決める。ボタンの場合はさわっても分かる形,色は目立つ強調色にすると。
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