トップにもどる
○講座記録
概要説明
実践報告1−ディスカッション1
実践報告2−ディスカッション2
ミニ・トークセッション
■実践報告1
「受け手の状況などを踏まえ発信・伝達できる能力の育成」
山脇健司(鳥取県気高町立浜村小学校)
山脇
受け手の状況をふまえて発信伝達できる工夫。総合でやった,浜村いいところさがし調査隊の報告。今年度3年生を担当。社会科で身の回りの生活社会の関わりを中心に,ごく身近な環境の体験活動。体験活動や情報機器の活用を多く取り入れれば,1学期、相手を意識した学習になると考えた。実際なりにくい。誰に,何を伝えたいか意識できれば,受け手をふまえた発信伝達の能力が高まると考えた。
相手意識を高める3つの手だて。
1.受け手を意識する
2.交流校との意見交換
3.活動の流れ・相手を意識させる場の工夫
浜村いいところさがし調査隊。受け手を意識して,地域を調査する活動をした。地域で収集した情報を,交流校と意見交換し,全国の交流校に発信する活動をして,常に相手を意識するようにした。
調査・対象。地域の人,児童,保護者。県内・県外の交流校として,鳥取,神奈川,静岡,富山,石川など97校を対象。まず「浜村には全国に自慢できることがあるか?」と子どもにたずねた。18名が「ある」,6名が「ない」。それを確かめるために地域の人に聞いて回ることにした。子どもたちはインタビューの事前体験がある。グループごとに自分たちの主張の正しさを確かめるために工夫した。あるグループは自分たちでランキングを作り,調査した。調査したことをもとに交流校に発信した。自分たちで5個の調査方法を使った。その5つが正しいかどうか問いかけ,子どもたちは全国の交流校にアンケート調査をした。子どもたちが交流を通じて大きなショックを受けた。子どもたちの書いた内容が相手に通じないことを体験した。
子どもたちとどうしたら,相手に伝わるか話し合った。相手に伝えるために,図書館の司書の方に伝わるかどうか(自分たちの活動を知らない人として)聞いてもらった。自分たちでも見直すことを活動として取り組んだ。
活動の流れ。浜村いいところさがし調査隊として,地域に出るときに自分たちの課題の足跡をさがして,自分たちは何を目標にがんばるか掲示させた。調査したことをまとめ,反省を述べた。
いいところ調査隊パート2としては,学級ごとに,学校単位で子どもたちをグルーピングさせて,FAX,eメール,掲示板等で調査をした。
相手意識をする場の工夫。Web学級日誌で届いたメールを地図に貼っていった。子どもたちには情報の分類として,感想を書いたのは赤。赤に対して返事を書いていった。
相手意識と活動の反省。子どもたちの相手意識がどう高まったか確認した。誰に聞くか目標をたてさせて反省。
第1回報告会
明確に相手意識をした子=3名,意識あり=3名,意識ない=18名。この18名は,ノルマ的な発想「メールを○通出したい」とか「自分たちの温泉のことを発信」だと,相手意識がない。
第2回の報告会の活動
明確に相手意識があるのが14名。子どもたちは自分たちの発信した情報に反応がなくて寂しい,と感想。最初,自分たちの発信した情報に関する反省が多かった。2回目の活動で,相手に関心を持ち相手の場所や気持ちを考える。自分たちの発信したことに対して,反応がないと活動意欲が低い。
相手意識があった子の中で,この子は神大寺小学校と交流。「自分たちの体育館はホタテの形をモチーフにしてデザインされている」ということを発信して,相手の体育館がどんな形をしているか知りたがった。
結果として,相手を意識する。かえってくる量が多ければ,多いほど,相手を意識する。交流校との意見交換で,相手のマイナスのメールに対して,子どもたちは自分たちがどう発信したら相手がこたえてくれるかを考えて工夫する姿がみられた。活動や意識をする場を作ることで,子どもたちが人から来たメールに対して返事をしようとする姿が見られた。
これは子どもたちとホームページを作ってる。子どもたちが自分たちでどこのコンテンツを作るか担当した。「一生懸命やった失敗には価値がある」ということ。
■ディスカッション
指定討論者:小柳和喜雄(奈良教育大学)
堀田
一生懸命した失敗には価値があるので,これはこれでいいと思う。今の発表聞いて分かりましたか?どこが分かって,どこが分からないか。近くの人と,1分くらい話をしてください。
(1分のディスカッションタイム)
堀田
はい,では中村さん。
中村武弘
グラフは何が言いたいか分からない。相手意識を見るのに,変化がよく分からない。
堀田
これは何のために?
山脇
調査1回目の子どもたちの反省と,青の印の方が調査2回目の相手意識。
堀田
2回目の方が明確な意識があると書いた人が増えた,ということを言いたい。それなら帯グラフかな。
中村ひとみ
そのグラフで,明確に意識あり,意識あり,意識なし,と判断された基準は?
山脇
相手校,相手の方の名前が書いてあるのを意識ありとしている。
堀田
それを先生がみて「これは明確に意識してある」と判断したと。
中村ひとみ
3段階(の基準)を説明してください。
山脇
1.相手の名前がある
2.相手にこう聞いたら返してくれるだろうと言っている
3.自分が何人メールを取ろう/アンケートを返してもらう。
中村ひとみ
それは先生ご自身の基準ですね。子どもは自分で「意識してるんだ僕は」といった子ども自身の評価はさせたんでしょうか。たとえば相手の名前を意識しながら,相手のことを記述していないけれど,相手を意識している子どももいそうです。名前が書いてあれば相手意識があるのか。
堀田
これはたぶん調査法の問題。山脇さんのやり方だとすると,基準が明確でないことが問題。あとはグラフの表し方は中村武弘先生が言ってくれた。
仲村篤志
手だてが実践のどこに効いているかが分からない。
堀田
仲村さんだったらどうしますか。
仲村
ひとつの手だてについて,もう少し詳しく,その手だてが効いているように分かるような調査をすればいい。
堀田
手だてに対する効果に関する仮説があったかどうかね。
中條
山脇さんの実践はとても細かくていいと思う。この実践は目的意識に力点を置いたらいいんじゃないかと思う。この実践がうまくいったのは,よいところさがしという目的意識を持続していくところに山脇さんが苦労されている。そうした方がスッキリする。
堀田
実践の売りどころの見せ方ね。それは参考にした文献が悪かったんじゃないですか?>山脇先生
山脇
全国の人に聞いたら,地域の人にいっても「海がきれいだよ」といったらそれを共通理解している。だけど他地域には通じない。相手意識をもって,子どもたちが手だてを考えていく…
堀田
相手を意識するっていうのは,どうなったら相手意識していることになるの?相手の情報と,こちらの情報量の差を意識するってこと?相手意識ってのがもしかしたらこの話をわかりにくくしているのかも。相手意識の手だての1番目が,受け手を意識する,ってなってるよね。どう使い分けてる?
山脇
最初は子どもは自分の発信した情報に対して,返事を期待していない。
堀田
山脇さんの問題意識を解決するには,この3つがいいと思った理由は。なぜこの3つでうまくいくと思ったのか。
山脇
まず最初に知る。自分たちの情報を流す。活動の流れを意識するための掲示。
堀田
では,その3つのどれが効いたのかな。
山脇
一番子どもたちが参考にしたのは掲示。掲示に気をつければいい。
堀田
けっこういいことしてるんだけど,うまく説明できてない。地元の研究会でも斬り合った結果こうなったとすると,地元の研究会の人にも責任があるね(笑)。田中さんひとこと。
田中
相手意識が定義されていない(ってのは地元では指摘していないけど)。目的とか,手段とかがごっちゃになってる。
堀田
小柳先生,コメントをお願いします。
小柳
山脇先生,報告ありがとうございました。おおよそ3つぐらい。1つは,表現・記述のこと。もうひとつは,実践に関わって。最後は研究方法。
1.表現記述
書かれてはいるんですが,子どもにどんな力をつけたいのか,どんな手だてをとったのか,子どもはどう変わったか,手だてに問題はなかったか。筋が見える組み立てによって書かれているか。要所要所には書かれているんですが,それが割に拡散している気がする。つけたい力があったら,それに対してとった手だてがあって,それをはかるやり方をして,その結果がどうだったか。問題は,手だてだったのか,はかる方法だったのか見返す。
浜村のよさについて学級で討論したところ,わかっているのは18名,わかっていないのは6名。そうすると読む方としては,浜村のよさを分からせたい活動にみえる。結果としては外に発信することを通して,地元を見返す。結果とつながっていないと焦点がずれる。
こういうことを表現するときにモデルを作ったらいい。横軸に自己意識と相手意識。相手に伝えたいこと/自分が伝えたいこと。縦軸は内容/表現。子どもたちにその四角の中を書かせていったらいい。内容は何か,そのときの表現方法は何か。それを埋めていくと,子どもたちには何が欠けているのかが分かる。書かせることで,その記述の変化によって子どもの変化が分かる。
2.実践に関わって
なぜ伝わらないのか。相手が意識できていないから,と先生は言う。相手がのぞんでいる情報といった,関心内容に対する意識。相手にとってわかりやすい意識,発表法の意識。それがグチャッと一緒になってる気がする。実際は調査したり,相手に聞いたりすると興味関心が分かる。それを伝えるときは,相手に分かってもらうための発表方法がある。そこについても「相手意識」という言葉の中で一緒になってる。あえていじわるに言うなら,相手意識というのを階層化していけばいい。相手意識というときに,相手の何を意識するか。そうしたら論文に深みが出るし,実践に味が出る。発表の仕方ってのは,相手を意識するだけでなく,自分の活動をメタに見るだけでもなく,情報内容との独特の関連がある。それは子どもには分からないので指導を入れたらいいと思う。相手に説明するときに,町の歴史に関する時間的展開に関わるとする。そのときは,過去・現在・未来としたらいいし,壁に貼って消えないような発表がいい。ところが,項目を説明するときはPowerPointがよかったりする。情報の内容と発表形式は非常にリンクしていく。それを子どもに伝えると一気にレベルが上がる。子どもたちには「また発表かい」という実践になる。
3.研究方法
単純に言ったら,データの取り方そのものに記述されてない。どうやってそれを取ったか,判断基準なども含めて明確ではない。やったことはあるけど,追試できないし,信憑性も確かめられない。
堀田
内容に応じて発表方法がいくつもあるというのも教師も意識してるのか。一生懸命やった失敗は価値がある。あとは呑んで挽回と(笑)。
(山脇先生に拍手)
○講座記録
概要説明
実践報告1−ディスカッション1
実践報告2−ディスカッション2
ミニ・トークセッション
|