http://horilab.jp
表先生に学ぶTOSSに関する学習会

■会の記録
目次
鈴木文男先生によるTOSSLAND紹介
高山佳己先生による街づくりの授業
表克昌先生による「What's TOSS?」/質疑応答


■高山佳己先生による街づくりの授業(15分)・議論

高橋佳己先生のホームページ
http://www5a.biglobe.ne.jp/~jubilo/

街路樹からまちづくりを考える
http://www5a.biglobe.ne.jp/~jubilo/mati%20gairojyu.htm

#参照する場合は上記の「街路樹からまちづくりを考える」をご参照ください。


模擬授業開始

高山
模擬授業はTOSSの教師修行で主流になっているものです。スクリーン!

#で,みんなスクリーンに注目。(日本の有名な街路樹10枚の写真)

高山
これらの写真を見て,気がついたこと,わかったこと,思ったこと,どんな些細なことでもいいですから書いてください。

高山
では三好さんの列。

・全部が木
・道路が通っている。
・遠近法を使っている…。

高山
これら街路樹。何のためにあると思いますか?ノートにできるだけたくさん箇条書きに書いてください。

高山
ひとつかけたら1年生,ふたつかけたら2年生…。

高山
では,伊藤さんの列からずっと。

・通りを涼しくする,人目を楽しませる,緑を強調する
・季節の移ろいがわかりやすいように同じ木を植える
・風をふせぐ,車の安全,空気の浄化
・緑化推進,緑でうるおい,土地にあった木を植える
・人の豊かな心を育てる
・廃棄対策,目を楽しませる,火事対策,町おこしのひとつ
・季節を感じる,排気ガス対策,森林浴,道ばたが分かる
・景観のため,人の心をなごます,季節のうつりかわりを知る
・心を休めるため,鳥のため,騒音対策,
・目を休ませるため,酸素をたくさん発生させるため,むこうの景色がみえないように

高山
日本で一番多い街路樹の名前はなんでしょう。その名前を書いてください。

三好の列から
桜,桜,桜,銀杏,銀杏,銀杏。

高山
桜3,銀杏3ですね。国内の街路樹ベスト5。5位プラタナス,4位トウカエデ,3位ケヤキ,2位桜,1位銀杏。

高山
ではどうして銀杏の木が一番多いのでしょうか?では誰か。

村上
冬に散るから。

五十川
葉の色が変わるから。

森下
排ガスに強いから。

#次の写真を提示し説明をする

・神戸市大国公園の樹木,阪神大震災
・炎や火の粉をくい止める樹木,大国公園の震災碑
・樹木がある場合とない場合とでの火災の伝わり方の比較
・関東大震災の湯島聖堂の焼けイチョウ
・浅草寺の焼けイチョウ
・江島杉山神社焼けイチョウ

高山
ここまで聞いてどんな感想をもちましたか。

三好
街路樹が見た目だけのためじゃないということ。

宮本
街路樹を作ることにも意図がある。

藤原
季節感とか空気だと思っていたけれど,防災の視点があることに気づいた。

森下
銀杏って燃えにくいんだなー,と。

#浜松市のプラタナスの木とその歴史

高山
私たちの街にはどこにどんな街路樹があるでしょう。どうして植えられるのでしょうか。さあ,みんなで街路樹探検に出かけましょう。


模擬授業終了

堀田
感想を何か。学生と先生に

村上
ものすごく練り込まれた授業だなーと。引き込まれました。

宮崎
なんの違和感もなくさーっと入ってきました。

三好
何の授業かなー?と思って,震災の話かなと思って,街路樹になったので,引き込まれていってそういくのか,と思いました。

平田
都市工学のような話?

高山
最近,まち作り教育に力を入れています。未来のまち作りを子供と伴に考えていく。

森下
PPTで秒単位でさしこまれているというのがすごくて,これはかなりかっちりとできあがっているわけですね。それを事前にやるというのはかなり大変だなぁと思った。タイミングとかすべて把握してるんですよね。すごい。

高山
私が,というより,TOSSのサークルでびしびし言われて…

堀田
ひとつの完成型なんですよね。

高山
私が「スクリーン!」と言いましたよね。「今からやるよ」なのか「スクリーンを見なさい」というのか。どの言葉にするかTOSSはうるさいですね。

堀田
じゃ,五十川さん。

五十川
今の10分の1でしゃべりたいんですが,先生がこういうことをしなさい,と言わないけど最後に子供たちは「よし!見つけにいくぞ街路樹」と思うはず。子供に何を考えさせるかがでている。

森下
この指導案は流通していますか?

高山
今申請中です。これを(指導案)をプリントアウトしてやれば誰でもできます。

森下
僕でもできるかなー?と

堀田
うちの学科は教育について何も知らないです。うちの学生は教育の情報化は知っていますが(と,森下の発言にフォロー)。

平田
防災のこと,震災のこと,戦災のことも組み合わせたのは何かあるのか。

高山
最後はまち作りなので,地元に落としたいんですよね。地元のまちで活動したい。

平田
全国の先生にする場合,地元に落ちるように…と。

宮崎
すごく計算させているとともに,街路樹から入ることがすごい。

堀田
題材の選定ね。

宮田
街路樹以外に作られていると思うんですが,題材の選定のときにどういうことを考えて選ぶのか…。

堀田
ポイントはそこにあるよね?高山先生はこのことを教えるのにどうして街路樹か?あるいは街路樹を題材に何を教えられると考えたか。

高山
向山先生が昨年度いらしてまち作り教育を話された。防災,安全面に関するまち作り教育ができたらいいなぁ,というフレーズがあった。街路樹のはたらきについてはいろいろあって,有田先生のものを読んで,調べていくうちにこういう授業ができた。

堀田
高山先生は,授業つくるときにどの程度調べますか?

高山
ノートの半分くらい。この授業のときは,30冊くらい都市工学や,街路樹関係を調べた。HPも数百あたった。公園が気になったらそこに行く。神戸の防災センターにも見学に行きました。

堀田
ひとつの授業のために時間をかけるのに意味があるのか,という人もあるけど,ひとつの授業にこれだけ時間をかけた人にはいろいろ見えるものがあるんです。

堀田
街作りというとバスだとかUDとかにいきやすい。それは王道だと思うんだけど,街路樹きれいというところから入って,そこからぐーっとまわって防災に来たのはひきこまれました。

高山
まち作り教育の実践ってあって,TOSSのサークルの仲間が授業開発をしたんです。その中で,こういった分野からの授業ができそうだ,というところで,街路樹から町作りから,というのが出てきた。最初にでたのがバリアフリーや福祉関係。まちおこし。そういうのが集まってこういうのができた。

堀田
これは,つまり,防災はひとつのカテゴリーですよね。たとえば,次は何なんでしょうね。防災をこの分野で教えるとしたら何ができますかね。街づくり,道路,計画都市っぽい,とか。こういうのって高山先生がひとりで思いついて,みなさんにかけるの?

高山
これは…子供にかける前にやりましたね。ある程度できあがって,子供に向かってやってみて手応えを感じた。子供全員に感想書いてもらって。1000人の方が集まったところで模擬授業しました。

堀田
模擬授業で見せるってすごい文化だよね。流通の形にして見せる。教師はやっぱり授業にしてみせるといつも授業しているから分かるしね。意見で言うより授業してみたほうがやっぱり説得力あるよね。ノウハウの流通の仕方を授業という形にしているのはすごいことだと思う。

藤原
些末な質問ですが,授業を見せていただいて,指示が明確で,そしてテンポのよさがある。TOSSのコンテンツはレベルが高いものとして維持されている。登録によって採用される/されないのがあるのか,それともランキングがされるのか。

高山
必ずしもアクセス数が多いものがいいとは限らない。アクセス数が多いと,ちょっとずつ見られて,それがまたどんどんあがる。

森下
この紙(高山先生の模擬授業のシナリオ)が流通のところについているんですが,ものすごく補足の説明が少ない気がするんですが。先生がしゃべることと,手順。それだけか!という気がするんですが。何がほしいか分からないけど,僕だと不安になる。

高山
だから,向山先生は「ライブで」と言う。間とかイントネーションとか。名人級の授業もライブでみなきゃ,と。

堀田
これは教育工学的に言うと…書けないんですね。これは技能なんですね。身体で感じろ,と。言葉を減らすってカルチャーからするとこれで十分なんです。

宮崎
これ,お配りいただいた文には,目標とか,指示の意図みたいなものが乗ってないんですが,それはこれを初めてみた先生がやってみようとしたときに,うまく意図とか目標を子供にもたせることができるんでしょうか。

高山
あの…あんまり学習目標って考えないんですよ。指示や発問の意図はあります。そこまでは書かない。

小川
僕もTOSSのことは前から勉強してたけど,そこをいちばん知りたい。なぜ,この発問までしぼりこまれたとか,こういう展開になった,とか。TOSS流や,TOSSランドなりに,という中身が知りたい。

堀田
今夜飲みながら話す重要な課題だと思う。僕のところにはよく「教育工学について教えてください」と脈絡なく来る人がいる。そこで僕が「じゃあ,本を読みなさい」と言う感覚と似ている。知りたいのは確かだけど,それはほかのところにでている。それが”TOSSランド流”というカルチャーになっていて,それを学んでから入るんだと思う。外から見るとわかりにくいのはそこだというのは確かだね。僕ら(教育工学者)はその意図を研究している。その先生の意図が授業のグレードの高さを規定していると考えると,なんで高山先生がこう言うんですかとか,何のために聞くんですか,と細かく研究している。そういう意図やプロのノウハウがほかの教師につくことで,ほかの人の力量が高まると思っているから。もしかしたら,それが分からない人もいるかもしれなくて。それをどうするのかっていうのがある。

堀田
それが,TOSSが提唱している重要なことであり,TOSSにお金をかけて集まる人の価値かも。しかもそれが有料でしか提供されないというのは実に健全だと思います。

森下
当然だと思います。

小川
発問の法則とか,教育技術をあげる法則があるんだと思う。

堀田
僕も「ゴミを10個拾いなさい」っていうのを自分のクラスでやったら子供は拾っていた。それは,なんでこれをやったら拾うのか,僕がそれまでできなかったのかが気になった。そういう短い言葉にたたみ込まれた技術の体系があって,それが使えるかどうかがプロとの境目。そこに重点化したのがTOSS。

堀田
最近,学会の論文審査で,審査する側が授業知らなくて,ビデオで見てもらえば?というアイデアが出てきている。つまり,映像で,向山先生流にいえば「ライブに」近くして見せたら分かるという話です。見てみれば分かるというのはあると思う。逆に言うと,こういう記述って全部書いても分からないんですよね。全部伝わらないから四角で囲むやり方があるから,TOSSの人たちの間では共有できる。

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